本研究の主な目的は,上位目標として“学業達成”を設定し,1つの下位目標(授業の出席)の達成が別の下位目標(試験勉強に励む)の追求に及ぼす影響が,楽観性の程度によって異なってくるのかどうかを検討することであった。また,下位目標の達成が別の下位目標への追求に及ぼす影響において,上位目標の達成の重要度も1つの要因として検討した。大学生を対象とし,研究1では場面想定法を用いて,続く研究2では,日常の学業場面を用いて検討した。本研究の結果より,楽観性が低い人においては,学業達成の重要度と試験勉強時間との間に関連がみられないが,楽観性が高い人においては,学業達成の重要度と試験勉強時間との間に関連がみられ,学業達成の重要度が高いほど試験勉強時間が長い傾向にあることが示された。また,1つの下位目標の達成が別の下位目標の追求に及ぼす影響について,楽観性の調整効果が確認された。楽観性の高い人では,下位目標の達成度が高くなるほど,別の下位目標の追求の強さが弱い傾向にあることが明らかとなった。本研究の結果より,楽観性の高い人は,文脈に応じて行動を調整することができる柔軟性が優れていることが示唆された。