2020 年 68 巻 3 号 p. 279-294
本研究では,過去経験と科学的な新情報の双方の妥当性を認め,両者の統合や共存を図る「範囲画定型ルール」を提示する方が,「範囲非画定型ルール」を提示するよりも,誤概念反応のリバウンド抑制に有効であるという仮説について検討した。また,誤概念へのこだわりの有無に関して,事前にこだわりの有る方が読み物(教材)の中で科学的な新情報を受け取ったときに認知的葛藤が生じ,過去経験と科学的新情報との統合や共存が促進されるため,リバウンドが抑制されやすいという仮説について検討した。学習者は提示されるルールの種類と誤概念へのこだわりの有無に基づき,4群に分けられた。実験Ⅰでは,「範囲画定型ルール」が提示され,こだわりが有る群におけるリバウンド発生者が多く,またリバウンドの程度も最も大きかった。仮説はどちらも支持されなかった。実験Ⅱでは方法を改善し,過去経験の情報を冒頭にも示して明確化し,科学的な新情報の妥当性も強調した。その結果,「範囲画定型ルール」の提示にはリバウンドを抑制し,修正を促す効果があった。また,こだわりが有る状態はリバウンドを抑え,修正へ近づける効果があった。