高校数学では,基礎的な概念の理解や数学的表現力の育成が重視されており,テストなどの学習評価でもそうした観点での診断が求められている。一方,概念的理解やその表現を問うテストとは具体的にどのようなものであり,そうしたテストの実施が教育現場の課題の解決にどのように資するかについては十分検討されていない。そこで本研究では,研究者が心理学的な視点を生かして行なった学習評価に関する提案を高校数学の実践場面で検討した。具体的には,(1)高校数学における概念的理解を評価するテストの考案,(2)テストを受験した高校生のつまずきの分析,(3)高校生による概念的理解の実態に対する教師の認識の検討,の3点を行なった。分析の結果,基礎的な概念の理解や数学的表現に課題が見られ,教師が生徒の理解の実態を必ずしも把握できているとは言えないことが明らかになった。また,結果を教師にフィードバックした際のグループディスカッションの様子から,教師が学習者の理解状況に対する認識を修正し,日常的な評価や授業でも概念的理解を問う必要性を感じていたことが示された。最後に,数学における学習評価の研究及び教育実践に対する示唆と展望について論じた。