教育心理学研究
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原著
場面緘黙経験者の適応・不適応過程についての研究
藤間 友里亜外山 美樹
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2021 年 69 巻 2 号 p. 99-115

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抄録

 場面緘黙経験者は,場面緘黙が改善した後にも不適応に陥ることがあると指摘されており,場面緘黙寛解後のアプローチも課題とされているが,これまで十分に研究されていない。場面緘黙寛解後の困難を軽減させるための研究も必要であると考えられる。本研究では,場面緘黙経験者の寛解後の具体的な困難や,現在の状態に至るまでのプロセスを明らかにすることを目的とし,場面緘黙経験者19名を対象に面接調査を行った。M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)により分析を行った結果,〈気質〉,〈緘黙時のネガティブな経験〉,〈寛解後不適応〉,〈不適応の改善〉,〈適応〉の5つのカテゴリー,合計21の概念から成るモデルが生成された。元々の気質と緘黙時のネガティブな経験が寛解後不適応につながっており,寛解後不適応は不適応の改善によって適応に至るというプロセスが見出された。概念として,『話す必要性を減らす』や『不安や緊張を軽減させる』,『発話能力を向上させる』など,不適応の改善に役立つ行動も見出された。本研究によって得られた知見は不適応状態に陥っている場面緘黙経験者にとって,不適応の改善のために有益な情報であると考えられる。

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© 2021 日本教育心理学会
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