教育心理学研究
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原著
「生と死の教育」におけるTeachable Moment Processの検討
―「いのち」に対する児童生徒の認識と教師の対応の検証を通して―
加藤 良則庄司 一子
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2022 年 70 巻 2 号 p. 131-145

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抄録

 本研究は,‘Death Education’においてEyzaguirre (2006) が提唱した説を基に,「生と死の教育」におけるTeachable Moment Processの4つの構成要素の内容を検討することを目的とした。具体的には,研究1は小5児童(N=130)を対象に「いのち」に対する認識のきっかけ,研究2は小5―中3の児童生徒(N=1,048)を対象に「いのちの認識尺度」の作成,研究3は小・中学校教師(N=169)を対象に「生と死の教育」への期待感等をそれぞれ検証した。その結果,構成要素の第1番目「学習者の生活における重大な出来事」は死生体験,マスメディア等であり,第2番目「出来事への学習者の興味と成長へのレディネス」へと繫がる可能性が推察された。第3番目「対応する教師の資質・能力」では約6割の教師が「生と死の教育」に対し積極的な気持ちを抱いていることが推察され,第4番目「教師による実際の自発的な対応」では8割以上の教師が何らかの対応をしていることが認められたが,その背後に多様な考え方があることが推察された。これらにより,Teachable Moment Process の成立について一定の可能性と幾つかの課題が示唆された。

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© 2022 日本教育心理学会
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