教育心理学研究
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原著
一次元性の仮定が満たされない場合の真値等化得点の実用性
川端 一光
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2022 年 70 巻 4 号 p. 362-375

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抄録

 本研究では, 項目反応モデルにおける一次元性の仮定が成り立たない場合の真値等化得点(True Score Equating score: TSE得点)の実用性を検証した。能力母数の多次元性,テスト版に占める不適合項目の割合,等化する2つのテスト版の尺度の差異の程度,項目数,そして項目識別力を実験要因,TSE法による得点換算表の精度と合否に関する判別精度を評価指標とし,テスト結果の実用性に関わる実験条件を探索した。シミュレーション研究の結果,多次元性が強い条件(ρ=.4)で,不適合項目の割合が大きく(50%),等化係数の逸脱度が大きく(k=1.5, l=-0.5),項目数が大きく(40),識別力が高い(a=1.25)場合には,TSE法による得点換算表に結果の実用性に関わるバイアスと標準誤差が生じることが示唆された。また,項目数に依らず,識別力が高い場合に,多次元性の強いρ=.4,50%条件で,適合条件からの判別率の低下量が最大となること,同条件では等化係数の逸脱度が高い場合に判別率が最小となることが示唆された。

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© 2022 日本教育心理学会
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