教育心理学研究
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原著[実践研究]
より適応的な方略使用を維持できる学習者ばかりでないのはなぜか
―3年間の語彙学習方略指導を通した方略変容の個人差の検討―
内田 奈緒水野 木綿植阪 友理
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2025 年 73 巻 1 号 p. 42-56

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抄録

 学習者は,学習内容が増えても必ずしも深い処理の方略を重視した適応的な方略使用に至らないため,指導者からの方略指導も重要である。指導後の方略変容は,ともに保持される浅い処理の方略と深い処理の方略の表出のされ方が変化する過程として捉えられるだろう。その過程で,深い処理の方略の使用が増えても,維持されずに減退する可能性もある。そこで,本研究では,研究者と英語教師が連携した3年間の方略指導実践を通して,学習者の方略変容の様相とその変動の個人差を検討した。実践は高校1クラスを対象とし,語彙学習における関連づけ方略を指導した。実践1―2年目は,関連づけ方略が増加・維持されたが,3年目に,関連づけ方略を安定的に使う生徒と,その使用を抑えて反復方略に頼る生徒が存在した。インタビューの結果,特に学習を俯瞰的に捉えて,英語学習の目標の意識や学習をうまく進められる効力感に差異が見られた。また,関連づけ方略を抑えた生徒も,自らの方略使用における問題点と改善の方向性を考えさせることで,深い処理の方略の使用が改善する可能性が示唆された。実践を踏まえて,方略変容における個人差要因と変容を促す手立てが議論された。

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