教育心理学研究
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Edwards Personal Preference Scheduleの日本人への
適用: I. 社会的望ましさの要因
岩原 信九郎杉村 健
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1965 年 13 巻 1 号 p. 31-41,62

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抄録

Edwards Personal Preference Schedule (以下EPPSと略す) は1954年にA.L.Edwardsが正常人における比較的独立な人格特性を測定するために作成したもので, 現在アメリカにおいてかなり広く使用されているようである。いまその手引 (Edwards, 1959) によつてEPPSの簡単な紹介をすると, この検査は15の人格特性の測定を目的としている。これらの特性はMurray (1938) によつて提案された欲求 (need) の概念にもとずくもので, 次に示すものである。1.achievement (achと略す, 達成), 2.deference (defと略す, 服従), 3.order (ordと略す, 秩序), 4.exhibition (exhと略す誇示), 5.autonomy (autと略す, 自律), 6.affiliation (affと略す, 親和), 7.intraception (intと略す, 内察), 8.succorance (sucと略す, 依頼), 9.dominance (domと略す, 支配), 10.abasement (abaと略す, 謙虚), 11.nurtrance (nurと略す, 同情), 12.change (chgと略す, 変化), 13.endurance (endと略す, 持久), 14.heterosexuality (hetと略す, 異性愛), 15.aggreSSiOn (ag9と略す, 攻撃) 。
これら15の欲求カテゴリーに対して, おのおの9個の陳述が用意され合計135の陳述がある。EPPSの特徴は普通のイソヴェントリー形式と異なり, 各項目は2つの異なる欲求に属する陳述から成つており, この対にされた陳述はその「社会的望ましさ」 (social desirability) の点でほぼ等しいようになつている。EPPSは全部で225のこうした項目を持つているが, 項目を作るにあたり, 同じ陳述が他より著しく多くあらわれないこと (3~5回) に留意しており, また225の項目の中15個は重複してあらわれ反応の斉一性 (consistency) の測定に用いられている。
ここで「社会的望ましさ」*はEPPSの場合各陳述について9点法と系列間隔法によつて尺度化された値で, その統制を試みていることが本検査の最も大きな特徴とされている。この点を少し説明すると, 普通のインヴェントリー形式すなわち単一刺激法では被験者は各陳述に対し一般に「はい」か「いいえ」で答えるよう教示されるが, この際の「はい」の比, すなわち承認率は各陳述の「社会的望ましさ」と非常に高い直線相関のある場合が多く, EPPSについては0.87であつた。それゆえある特性についての陳述で「はい」と答えたもののどれだけが真の自己評価によるもので, 社会的望ましさによるものでないか決められない。そこで社会的望ましさを統制するため, すなわちその要因の効果を最小にするために, ほぼ同じ社会的望ましさをもつ陳述を対にし, そのうち, いずれかが自己によりよくあてはまるか強制選択させたのがEPPSの特徴といわれるものである。
本研究の目的はEPPSの日本人への適用の試みのひとつとして, その日本訳にもとつく日本人の社会的望ましさの要因についてアメリカの原版の結果と比較し検討することである。

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