教育心理学研究
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教室における暗黙の (impljcit) 強化
杉村 健
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1965 年 13 巻 2 号 p. 65-69,123

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抄録
Sechrestが小集団において見出した暗黙の強化の効果が, 競争的な学級集団においても生ずるかどうかを検討した。
小学校4, 5, 6年生各3学級ずつの児童を用い, それぞれ2学級を実験群, 1学級を統制群とする教室実験を行なつた。競争的な教示のもとに, 1けたの数を4個加える加算作業を4分間ずつ2日続きでやらせた。実験群に対しては, 2日目の作業開始直前に, 第1日目の成績についての言語強化 (賞賛・叱責) が与えられた。すなわち, 各学年で実験群に割当てられた学級成員を, 第1日目の成績がほぼ等しい男女同数ずつの2群ずつに分け, そのうちの1群に属する者の名前を呼んで級友の前で賞める場合 (正の強化) と, 同様にして1群に属する者のみを級友の前で叱る場合 (負の強化) を作つた。したがつて, そのような明白な強化を受けた級友を観察していた者は, 暗黙の強化を受けたとみなすことができる。
第2日目の正答数から第1日目のそれを引いた差によつて比較してみると,(a) 明白に賞められた者と, 明白に叱られた級友を観察していた者とが, 同程度によい成績を示し,(b) 明白に賞められた級友を観察していた者の成績が最も悪いことが明らかとなり, また (c) 暗黙の強化について学年差が暗示された。強化の受取り方に関する内省報告からは,(d) 明白に叱られた級友を観察していた者は叱責を回避しようとする気持が強く, 明白に賞められた級友を観察していた者は賞賛を得ようとする気持が強いことがわかつた。
以上の結果から, 学級集団においても暗黙の強化が生ずることが明らかであるので, 賞罰の効果に関するHuslock流のやり方についての問題点や, 実際の教室場面における暗黙の強化の問題などについて述ベた。
付記本研究の共同研究者である奈良学芸大学生福島俊博君, 統計的分析に対じて有益な助言をいただいた滝野千春助教授, 英文アブストラクトの校閲をしていただいた上田敏見教授および実験にご協力いただいた付属小学校川端通敬教頭と担任諸先生に厚く感謝する。
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© 日本教育心理学会
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