教育心理学研究
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依存性の発達的研究: I
大学生女子の依存性
高橋 恵子
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1968 年 16 巻 1 号 p. 7-16,60

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抄録

本研究は依存性がいちおう発達の最終段階に達していると思われる青年後期において, それがどのような様相を呈しているかを, 依存構造というモデルをとおして解明しようとするものであった。その結果明らかにされたのは次の3点である。
(1) 依存構造: 依存構造には限られてはいるがかなり多くのさまざまな対象が含まれ, それぞれ異なった機能を与えられ, 分化した位置を占めている。そして, この対象間の機能分化は, 各個人が相対的に強い依存要求をひきおこす, その個人の存在を支える機能を果たすという意味で中核になっている単数または複数の焦点を中心に, いく人かの対象がそれぞれの役割りを与えられ, それぞれの意味を持ち, さまざまに位置づけられていることを予想させる。
(2) 依存構造の類型: 依存構造の構造化の様相一対象の数, 焦点の有無, 焦点の数, 焦点と他の対象との機能分化などは各個人において異なるのであるが, 焦点が何かによって依存構造を類型化してみると, 同じ類型間には対人的依存行動の共通点が認められることが明らかになった。
(3) 大学生女子における依存性: 青年においてもここで問題にする意味での依存性が認みられる。つまり, 現象的には自立的であると考えられている大学生においても, 少なくとも女子では依存要求が認められる。そして特に顕著なことは次のようなことである。
(1)単一の焦点になる対象としては, 母親, 愛情の対象, 尊敬する人などが多く, 同性の親友や父親は少ない。
(2) 女子青年と母親との情緒的結合は強い。このことは他の研究 (たとえば, 久世・大西, 1958) でも指摘されていることであるが, 本研究でもこれと一致した結果が得られた。母親は単一の焦点となる傾向が大であり, 複数焦点型でも焦点のひとりはほとんど母親であり, 親密度も高い。
(3) 母親を焦点とするものは, 他の型に比べ家族中心的傾向がある。またこの型では恋人もないものが多く, 親友との結合も弱く, 青年期の発達からみて問題を感じさせる。
(4)焦点が多いもの, および明確でないものでは, 高得点の対象のひとりにほとんど必ず母親が含まれる傾向があり, 類型の特徴も母親型の様相を呈し, 上記の (3) と考え合わせて, 母親以外の単一の焦点の顕在化が発達の方向かもしれない。
(5)大学生女子では父親との結合はそれほど強くはない。父親は情緒的に拒否されているわけではないが, 依存構造のなかでは道具的色彩の増した位置づけがなされていると予想される。また, 父親は尊敬する人と競合的な立場にあり, 尊敬する人を焦点とする依存構造ではほとんど父親はしめだされる傾向がある。
(6)一般に女子青年の依存構述においては同性の親友の占める位置は少ない。

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