教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
子どもの時空判断に及ぼす微・高速度映写画面の効果
森 一夫
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 21 巻 3 号 p. 171-176

詳細
抄録

子どもたちに非日常的な異常速度運動を視覚体験させたところ, その持続時間の判断は次のように変容することが認められた。
1. 5才児に微速度映写画面を見せてから直ちに落下時間を予測させると, これを過大に評価する傾向が認められる。逆に, 高速度映写画面を見せると, 落下時間を過小に予測する傾向が認められる。
2. 11才児に高速度映写画面を見せると, 5才児と同様に落下時間を過小に予測する傾向にあるが, 微速度映写画面では殆ど影響を受けていない。また, 同じ走行運動を異なった映写速度で2つのスクリーンに映したところ, 次の知見が得られた。
3. 同時映写の場合, 5才児の距離判断にはタウ運動効果が認められる。また, 遅い運動体が速い運動体と同時間に短い距離を運動するときの持続時間の判断では, カッパー運動効果と反カッパー運動との併存が認められる。これはまた, 彼らの距離と時間の概念が運動知覚を媒介にして強く依存し合っているために, 明確な同時性の概念が欠如していることを示すものと推定される。11才児では, 速度・時間・距離の論理的関係が形成されているものもあるが, 彼らの多くは持続時間の判断が運動速度の知覚にゆなり依存するため, 多様な傾向性を示す。
4. 継時映写の場合, 5才児ではカッパー運動効果や反カッパー運動効果に基づく傾向というよりも, むしろ後で知覚した運動の特続時間の方がより長いと判断する傾向が認められる。11才児では反カッパー運動効果に依拠した持続時間の判断を行なう傾向が見られる。これは Piagetの見解とは異なり, Cohenの主張を支持するものである。
付記 本研究の良き協力者であったMr. Nikom Tadangを始め, 山形, 小川, 中井の各氏それに五条幼稚園の長野園長, 天王寺小学校の岡校長に深謝の意を表する。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top