教育心理学研究
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同音多義語連想に関する臨床的研究
森谷 寛之
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1977 年 25 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

従来の言語連想研究では, 同音多義語を刺激語として使用されることが少なかった。しかし, 日本語の特色として同音多義語は無数にあり, これを無視することはできない。本研究においては, 多義語を積極的に採用し, 多義語のもつ特質を生かせるような連想研究の可能性の探究を試みた。-
義語20語と多義語80語を運び, 刺激語表を作成した。多義語は, 性, 不安, 死, 攻撃性, 家族関係等の意味と中性的な意味をひとつの語の中に含んでいる。刺激語の配列は, はじめの3語は一義語を並べ, あとはランダムに配置した。刺激語は平仮名で記入したカードによって視覚的に呈示された。実験手続は, Jungの連想検査法に準じ, 個別に行われた。被験者は, 統制群として大学生23名 (男11, 女12), 神経症群24名 (男女各12), 精神病群20名 (男女各10) である。得られた主な結果は次の通りである。
(1) 連想課題では, 精神病群は他の2群よりも多義性に気づくことが少なく, 有意差がみられた。神経症群と統制群との間には有意差がみられなかった。
(2) 多義語の語義をできるだけ多く定義させる課題においては, 一統制群が一番成績がよく, 他の2群と有意差がみられた。しかし, 神経症群と精神病群との間には有意差はみられなかった。
一般に, 神経症群は多義語の不安, 衝動の意味に対して敏感であり, この意味からの連想反応語が多い。一方, 精神病群は, むしろ神経症群に比べこのような反応は少なくなっていることが特色である。
(4) 性的な反応についてはあまり群差は顕著ではなかった。統制群, 神経症群はできるだけ性的反応を回避し, 防衛しようと努力している。しかし, 精神病群には, そのような傾向が他の2群よりも小さくなっている。これは, 精神病者の自我防衛の弱さを意味しているものと思われる。

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