教育心理学研究
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親子関係の相互認知
小嶋氏の原資料の一分析
辻岡 美延山本 吉廣
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1977 年 25 巻 1 号 p. 18-29

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抄録

1. SchaeferのCR-PBIを採用した小嶋 (1969, 1975) の資料を,(1)息子と父,(2)息子と母,(3)娘と父,(4)娘 と母, さらに(5)これら4種の対のデータを結合した結絆サンプルの都合5組の独立なデータとして, それら 5個の尺度間相関行列 (子どもの報告18尺度と親の報告18尺度, 計36尺度) が因子分析され, それぞれの群間の因子構造の一致性係数の極めて高い7個の一次因子が抽出された。
2. 求められた7個の一次因子は, 親と子において共通の次元として出現した同一化 (ID) 因子と, 親と子においてそれぞれ一次独立に出現する情緒的支持 (E S), 統制 (CO) および自律性 (AU) の因子である。
3. 親子それぞれにおいて相対応し, 弱い正の相関を有する3対の因子は, 二次因子分析の段階では同一の二次因子に統合され, 一方, 同一化因子はそのまま二次因子へ昇格した。
4. 親子関係の認知においては, ES因子とCO因子の関係は親内部, 子内部においては協和関係にある (正の相関) が親と子の間においてはやや不協和 (逆相関) の関係にある。これは父・母と息子・娘のいかなる関係にも存在する.
5. 二次のID因子と他の親側および子ども側のES, CO, AU因子の相互相関の構造を子どもの社会化の発達と関連させて研究するという精神分析学的且つ実証的研究法の可能性が提案された。

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© 日本教育心理学会
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