教育心理学研究
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幼児における併行弁別学習に及ぼす過剰訓練効果
中川 恵正
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1980 年 28 巻 1 号 p. 38-47

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抄録

本研究は3コの実験からなっている。実験1では, 併行弁別訓練事態において過剰訓練によって手掛り結合が形成されるか否かが, 実験IIでは, 手掛り結合に基づいて2コの弁別課題遂行間に相互作用が生じるか否かが, 実験IIIでは, 3コの弁別課題が併行して訓練される事態においても過剰訓練によって手掛り結合が形成され, そして相互作用が生起するか否かが検討された。実験Iでは, 32名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け, そして過剰訓練 (24試行またはo試行) を受けた後, テストを受けた。テスト条件: 群Iは 2コの弁別刺激対の負刺激が互に入れ替る条件であり, 群IIIは2コの弁別刺激対とともに原学習時の正刺激が残存し, 負刺激がともに新しい刺激に替る条件であり, 群 IVは2コの弁別刺激対ともに原学習時の負刺激が残存し, 正刺激がともに新しい刺激に替る条件であり, 群IIは群 Iと同じ条件だが, 過剰訓練を受けない条件である。主要な結果は次の通りである。1, 群I, IIIおよびIVの弁別遂行間に差がみられなかった。しかもこれら3群のテストでの弁別遂行は過剰訓練期間中の弁別遂行に比べてそこなうことがなかった。2, 群IIは他の3群に比べて弁別遂行が劣っていた。
実験IIでは, 64名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け, 過剰訓練 (20試行または10試行と 0試行) を受けた後, 逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件: 全体逆転群は2コの弁別課題ともに同時に逆転された。部分逆転群は1コの弁別課題のみが逆転され, もう1コの弁別課題は逆転されなかった。分離逆転群は 1コの弁別課題のみが逆転され, もう1コの弁別課題は除去された。統制群は原学習, 逆転学習ともに1コの弁別課題の訓練を受けた。主要な結果は次の通りである。1, 過剰訓練を受けたとき, 全体逆転群は他の3群より早く, また分離逆転群と統制群は部分逆転群に比べて早く逆転学習を完成した。2, 全体逆転群の逆転学習は過剰訓練によって促進され, 分離逆転群および統制群の逆転学習も促進される傾向がみられたが, 部分逆転群の逆転学習は遅延された。
実験IIでは, 60名の幼児は3コの弁別課題を用いて併行訓練を受け, 過剰訓練 (30試行と0試行) を受けた後, 逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件: 全体逆転群は 3コの弁別課題ともに逆転された。部分逆転―I群は1 コの弁別課題のみ逆転され, 残りの2コの弁別課題は逆転されなかった。部分逆転―II群は2コの弁別課題がともに逆転され, もう1コの弁別課題は逆転されなかった。主要な結果は次の通りである。1, 標準訓練条件下と過剰訓練条件下とにおいて, 全体逆転群の学習の速度と部分逆転群 (1およびII群ともに) のそれとが逆関係になった。2, 部分逆転群 (IおよびII群ともに) の逆転されない弁別課題における誤反応は過剰訓練によって増大した。

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