教育心理学研究
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対象の永続性課題におけるカバーの効果
前原 武子中峰 朝子
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1981 年 29 巻 3 号 p. 236-239

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抄録

従来, 対象の永続性課題解決の失敗は, 対象概念や認知能力, あるいは運動技能の未発達によるとの異なる解釈がなされている。本研究は, 対象の永続性課題解決過程が, カバーを取ることとカバーの下の対象を手に入れるという異なる2つの目標志向性を含むことと, たとえ諸能力が発達していても, 課題解決への動機づけが低い場合には, 対象の永続性課題解決に失敗することを予想した。そこで, 標準的な布カバーと, 乳児の注意を喚起しやすい赤色の紙カバーの2種類の対象の永続性課題を, 生後7.4か月児に与えた。その結果, 課題解決の正反応数および反応速度においては, 課題間に有意差がなかった。カバーに対する乳児の態度を観察したところ, 「カバーを取るだけ」で, 課題解決には失敗するが, カバーを探索している行為は, 布カバーより紙カバーで多く, 逆に, 課題に「興味を示さない」行為は, 紙カバーより布カバーの場合に多く見られることが実証された。

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© 日本教育心理学会
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