教育心理学研究
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教育目標の分類に関する研究
大西 佐一
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1969 年 3 巻 3 号 p. 44-50,56

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抄録

教育諸目標に含まれている機能や概念が明瞭に理解されることによつて, それらの目標の指導及び評価の効果が促進される。このため総ての主要な概念がその基礎的な特徴に応じて分析され分類され, 簡単なものから複雑なものへと統一された体制にまで発展されねばならない。かくすることによつて各教育目標はそれの個有の意義や解釈が与えられて, 他のものから明瞭に区別され得るのである。この計画は全構成を通じて出来るだけ論理的並びに心理学的に一貫性を有するものであることが望まれる。さし当り各教科及び学年段階に無関係なる基本的分類形式がここに示されている。
先ず現行の教育目標け認識的, 情意的, 運動的の三領域に分けられる。この中第一と第二の領域に属する諸目標は第三の領域のそれよりも, その質に於てより複雑であるので, この二領域に対する分類の拠り所を示したのがこの研究である。
認識的領域は知識と知的技能の二つに分析され後者は更に理解, 応用, 分析, 綜合, 評価の五種の知的行動として表現されている。情意的領域は刺戟に対する反応の機制の順序を追つて三段階に分けられる。対象の受容, 感動的体験, 傾向の形成がこれである。この中で対象の受容過程はこれを関心と興味とに分析する。第二の感動的体験は所謂鑑賞であり審美的諸目標を含む。第三の傾向形成の段階は, 習慣, 態度, 適応の三過程に分けて説明されている。習慣はその行為が自働的になることを求める如き単純な目標に制限され, 又態度はそれが形成される時の活動の種類に従つて, 知的, 審美的, 道徳的 (又は社会的) の三つに分けられる。最後の適応機制は抑制的と積極的の二種の行動形式から見ることができる。
認識並びに情意の両領域に亘つて, 各項目域いは副項目の内容を例証する為に, 現行の学習指導要領の中から具体的な教育目標が選ばれて示されている。この様にして構成された基本的分類形は単に現行の諸目標をよりよく理解するに有用であるのみならず, 更に新らしい而も重要な目標を導き出したり, 又教育諸研究や諸通信の能率を高める為にも有用であると思われる。
なお最後にこの構想を適用する一例として一般社会科の一般目標を分析した私案が掲げてある。

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© 日本教育心理学会
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