教育心理学研究
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推論と再帰的な情報処理能力
パラドクスの理解について
糸井 尚子
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1982 年 30 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

再帰的な推論を問題にした。再帰的な推論の達成を規定する要因のひとつとして, 再帰的な情報処理能力が考えられるという仮説を検証することを目的として, 2つの実験を実施した。再帰的な推論として, 2つのパラドクス課題をとりあげた。そして, 再帰的な情報処理能力を測定する課題として, 第1実験では文の記憶・主語捜し課題を, 第2実験では再帰的な思考の言語表現課題を用いた。
中学生を被験者とした2つの実験で以下の結果を得た。1. 2つのパラドクス課題の理解の成績の問には強い正の相関がある。2. 再帰的な情報処理能力を測定する課題では, 再帰の度合の高い課題ほど正答率が低い。3. パラドクス課題の理解で正答することと, 再帰的な情報処理能力を測定する課題でよい成績を示すこととの間には正の連関がある。
そこで, これらの実験によって仮説は反証されなかった。従って, 再帰的な推論の達成を規定する要因のひとつとして, 再帰的な情報処理能力を仮定することが許されることが明らかになった。

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