教育心理学研究
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間接的要求の理解に関わる要因
仲 真紀子無藤 隆藤谷 玲子
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1982 年 30 巻 3 号 p. 175-184

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抄録

本研究ではClark (1979) の枠組に沿って, 日本語における間接的要求の理解に関わる要因を調べた。
方法は, 電話を通じて商店の店員 (被験者) 計587人に間接的要求 (例: 「閉店は何時か教えて頂けますか」) を行い, その反応を分析するというものである。
その結果, まず, Clarkの挙げた以下の6つの基本的要因は, 日本語における間接的要求の理解にも関わっていることが確認された。
1. 要求の手段 (例: 相手の意図を問う, 本人の要求を述べる) の慣習性。
2. 表現形式 (例: 「…して頂けますか」) の慣習性。
3. 字義的な意味への答え (例: 「…して頂けますか」を字義的な質問として受けとめた場合, その質問への答え) が, 話し手-聞き手間で明白ないし分かりきっている度合。
4. 要求の内容が明示的に表現される度合。
5. マーカー (「すみませんが」等) の存在。
6. 話し手の目標や計画に関する先行情報や言葉の手がかり。
さらに本研究では, 次の3つの事実が見出された。
7. 聞き手は, 本人の既有の知識ないしそれに基づく期待を働かせながら, また, 話し手がもっているであろう知識や期待を考慮しながら, 要求を理解する。
8. 要求文の字義的意味に応答することが社会的文脈にとって不適切である場合, その応答は避けられる傾向がある。
9. マーカーは, 要求を伝わりやすくする効果と, 要求を丁寧にする効果をもつようである。要求を伝わりやすくする効果は, 要求文が非慣習的である場合, また, マーカーが文中についている場合に, 大きい。

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© 日本教育心理学会
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