教育心理学研究
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幼児の直接学習と観察学習における注意
大野木 裕明
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1983 年 31 巻 2 号 p. 113-119

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抄録

幼児の直接学習と観察学習における注意を比較するために, 2つの実験を実施した。注意を捉えるために, 学習課題の成績から推測する方法と学習課題への注視回数を評定する方法とを併用した。実験1では, 学習方法 (直接学習, 観察学習)×学習課題(中心的-偶発的記憶課題, 成素選択課題) の要因計画に幼児48人が割りつけられた。その結果, 注視回数得点は非常に高く, 各群間に差異は認められなかった。学習課題については, 成素選択課題群では, 動物図形得点の方が幾何学図形得点よりも多く, かつ, この得点差パターンは直接学習群と観察学習群とで類似していた。中心的-偶発的記憶課題群では, 直接学習群では中心学習 (幾何学図形得点による) の方が偶発学習 (動物図形得点による) よりも多かったが, 観察学習群では中心学習と偶発学習の間に差は認められなかった。以上のことから, 本研究で用いたような学習手がかりとしてドミナントでない方を中心刺激とする統合型中心的-偶発的記憶課題事態では, 直接学習と観察学習の得点差パターンは異なることが見出された。実験IIは, 実験Iの結果の再確認と注視回数測度の精密化を主目的として実施された。68人の幼児が, 学習方法 (直接学習, 観察学習)×妨害条件 (学習者の学習課題への注意をそらす条件の有無) の要因計画に参加した。注視回数について, 妨害条件は観察学習者の注視回数得点を低める効果を持ったが, 直接学習には影響を及ぼさなかった。学習課題について, 妨害なし条件では実験Iと同じく, 直接学習群では中心学習の方が偶発学習よりも多く, 観察学習群では中心学習と偶発学習の間に差は認められなかった。妨害条件では, 直接学習群も観察学習群も同様に, 中心学習と偶発学習の間に差が見出されなかった。

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