教育心理学研究
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青年期における性役割観および性役割期待の認知
伊藤 裕子秋津 慶子
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1983 年 31 巻 2 号 p. 146-151

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抄録

青年期における性役割認知の発達過程を明らかにすることを目的として, 青年前期から成人期までの男女800名を対象に, MHF scaleを用いて資料の分析, 検討を行った。結果は以下のようにまとめられる。
1) 価値および期待にみられる成人同様の性役割のステレオタイプはすでに青年前期には獲得されていた。
2) 学年が進むにつれて役割期待を性に型づけされた方向に認知するようになり, 特に大学生では同性役割が期待される以上に異性役割は忌避されるべきと認知している。
3) 学年が進むにつれて性役割を識別的に捉えるようになるが, 性による役割期待の差異を強く意識し始めるのは高校段階で, それはまず同性役割から始まり, 次いで異性役割の識別へと移行する。
4) 性役割観形成における発達的推移には性差がみられ, 男子が年齢上昇とともに男性役割の価値を高めていくのに対し, 女子では高校を境に転換がみられ, 女性役割から男性役割への価値の移行が生じている。
5) そのため, 学年が進むにつれ男子が男性役割と女性役割の自己に占める価値を明瞭に峻別していくのに対し, 女子では男性役割, 女性役割の双方が自己の価値規範として受け入れられるようになる。
6) しかし, 同時に男女ともHumanityを自己の役割に大きく組み込んでいくようになり, Humanityは両性にとって最も高い価値を占める。だがその価値および期待を認知するのは男子が女子より遅れる。
7) 期待と自己とのズレは, 男子が年齢上昇とともに徐々に解消していくのに対し, 女子では逆に高校から大学にかけて大きくなり, 役割葛藤が生じていることを予想させる。

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© 日本教育心理学会
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