教育心理学研究
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大学生における同一性の諸相とその構造
加藤 厚
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1983 年 31 巻 4 号 p. 292-302

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抄録
Marcia, J. E. による同一性地位概念を客観的な測度によって測定し, その成立における11の心理社会的領域 (家族との関係, 将来の仕事, 生き方や価値等) および 3つの時期 (現在, 大学に入ったころ, 高校2年生のころ) の重要性を検討し, あわせて各同一性地位の特徴を明らかにすることが本研究の目的である。
概念的検討整理をふまえて, 「現在の自己投入」, 「過去の危機」, 「将来の自己投入の希求」の3変数の組合わせによって, 6つの同一性地位を定義する同一性地位判定尺度を作成した。大学生310名 (男子170名, 女子140名) のデータを分析した結果, 以下の諸点が示された。
(1) 同一性拡散地位および権威受容地位は, それぞれ全体の約4%を占めるにすぎず, 同一性拡散-積極的モラトリアム中間地位が, 全体の約50%を占める。
(2) 男子においては, 「将来の仕事」および「生き方や価値」の領域における危機と自己投入, 「勉強」の領域における自己投入が, 同一性地位と密接に関連している。
(3) 女子においては, 「大学に入ったころ」の危機の水準, および大学入学以降の「同性の友人との関係」, 「勉強」, 「将来の仕事」, 「生き方や価値の追求」の各領域における自己投入の水準が, 同一性地位と密接に関連している。
(4) 「政治」や「宗教」は, 大学生における同一性地位の形成において, 重要な領域であるとは言い難い。各同一性地位の特徴およびその性差も, 特に「大学に入ったころ」の危機および自己投入の水準に関して, 詳しく検討された。
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© 日本教育心理学会
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