教育心理学研究
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児童の社会的特性に関する自己認知と母親による認知の差異
小松 孝至
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1999 年 47 巻 1 号 p. 49-58

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抄録

223名の小学校3年生, 243名の小学校6年生およびその母親を対象に, 子どもの社会的特性に関する母子の認知の差異と母子関係の特徴との間の関連を検討した。外向性・調和性・統制性と名付けた3種類の社会的特性に関する調査項目を自由記述調査の結果およびパーソナリティ研究を参考に構成し, これを用いて子どもの自己認知・母親による認知に関する子どもの認知・母親による実際の認知を調査した。同時に母親からのソーシャル・サポートに関する子どもの認知, および子どもの社会的特性が母子間で話題になる頻度 (話題頻度) を調査し, 子どもの自己認知と母親による認知に関する子どもの認知の差得点 (自己内差得点) とサポートの認知および話題頻度の問の相関, 母親による認知に関する子どもの認知と母親による実際の認知の差得点 (母子間差得点) と話題頻度の間の相関を検討した。その結果, 有意な負の相関が一部で見出され, 話題頻度が高いほど母子間・自己内差得点が小さくなり, サポートの認知が高いほど自己内差得点が小さくなるという関連の存在が示唆された。また, 6年生および女子の方が各差得点が有意に小さいという結果も一部の特性で見られた。これらの結果から, 子どもの自己認知, 周囲の他者による認知, 他者による認知に関する子どもの認知, という3つの認知の差異の様相が, 他者との関係の特徴と関連を持つものであることが示唆され, 自己概念の発達を社会的関係の中で捉えて行くことの重要性が, 従来の実証研究にはない視点から改めて示された。

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