学習への不適応感をいだく児童・生徒への相談・指導を通じて, 教育と認知心理学的研究の結びつきをはかろうとする実践的研究活動として「認知カウンセリング」がある。認知カウンセリングでは学習者に対して, 概念, 図式, 手続きなどについての言語的記述を促し, それを通常の学習方略としても行うようにすすめることが多い。本稿では, 中学生のいくつかのケースからこうした方略が生徒にほとんどとられていないことを示した。教育的視点からは, 学習者自身の理解状態の明確化と, コミュニケーション能力の育成という点で重要な学習指導方法と考えられること, また, 認知心理学的な背景としては, 概念獲得と命題的表象の認知心理学的理論があることを述べた。さらに, 数学や理科の学習をとりあげて, 学習者の様子とカウンセラーのはたらきかけの場面を具体的に示した。最後に, 学校の授業やテストに対する提案を行い, また, 言語的記述を促す学習指導についての反対論をとりあげてそれらを批判的に検討した。