教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
幼児の物語理解に影響する要因
作動記憶容量と意図情報の役割に注目して
由井 久枝
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 50 巻 4 号 p. 421-426

詳細
抄録

幼児の物語理解能力を規定する要因の1つとして, 作動記憶容量の限界が考えられる。本研究では, 作動記憶容量の限界を補う方略として, 登場人物の意図を明示することによる意図情報の役割に注目し, その効果について検討した。まず, 幼児 (4;5~6;5) を対象にリスニングスパンテストを行い, 作動記憶容量大群と作動記憶容量小群に分けた。次にそれぞれの群の物語理解を, 物語の登場人物の意図を明示した場合と明示しなかった場合とで比較した。その結果, 意図情報の明示によって物語スキーマが活性化されると, 物語の展開の把握が容易になり, 文章の逐語的記憶及び文章全体の理解が促進されることが見出された。これは, 文章処理が効率化されたためであると考えられ, 意図情報は作動記憶容量の限界を補うことが示された。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top