教育心理学研究
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ポジティブな目標表象とネガティブな目標表象
“3次元の枠組み”の提唱
村山 航
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2004 年 52 巻 2 号 p. 199-213

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抄録

同じ意味内容の目標でも, その表象のされ方 (目標表象) はポジティブ (P) な場合もネガティブ (N) な場合もある。この目標表象におけるP-Nという考え方は, 多くの理論・領域で暗黙に取り入れられているが, その定義が不明確である。本論文では, 目標表象に関し, 基準の次元・達成の次元・結果の次元という, P-Nを極に持つ3つの次元からなる定義の枠組み (3次元の枠組み) を提唱する。そして, 1) その枠組みによって従来の研究を捉え直し, 2) 各次元が行動制御過程に与える影響を明らかにし, 3) その影響メカニズムを検討する, という3点を目的とした。その結果, 達成目標理論・制御理論は基準の次元, 目標フレーミング研究と制御焦点理論は達成の次元・結果の次元という次元で捉えられることが示された。また, これまでの実証研究では3次元間の交絡が多いため, 次元の行動制御過程に与える影響は不明確であることが明らかになった。さらに, 基準次元の行動制御過程への影響メカニズムとして, BAS・BISという脳内システムによる媒介が存在することが示唆された。一方, 達成次元と結果次元の影響メカニズムとして, 感情による媒介モデルが提案された。

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© 日本教育心理学会
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