教育心理学研究
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「象徴事例」概念の提案と歴史学習に及ぼす象徴事例の効果の検討
麻柄 啓一進藤 聡彦
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2004 年 52 巻 3 号 p. 231-240

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抄録

言語教材は一般に「Pならば (は) qだ」という命題形式で記述できる。こうした命題を具体化する場合, これまでは前件Pを具体化した事例 (代入例) のみが考えられてきた。しかし後件qを具体化する事例を考える必要がある場合を示し, これを象徴事例と概念化した。その上で歴史命題の学習における象徴事例の効果を検討しようとした。小学校5年生を対象とした実験1では象徴事例が意外感を喚起することで学習内容を面白くする効果 (第1の効果) や, 他の象徴事例を受け入れやすくする効果 (第2の効果), もとの命題の理解を促進する効果 (第3の効果) を探った。実験の結果, 第1の効果が確認され, また第2と第3の効果は部分的に支持された。大学生を被験者とし, 第2の効果に限定して調べた実験2では, 象徴事例は類似の象徴事例の受け入れに顕著に現れること, 複数の象徴事例を用いることで広範な象徴事例を受け入れやすくすることを示唆する結果を得た。

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