教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
物語文と説明文の状況モデルはどのように異なるか
5つの状況的次元に基づく比較
井関 龍太川崎 惠里子
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 54 巻 4 号 p. 464-475

詳細
抄録

物語文と説明文から形成される状況モデルは異なるのか, 異なるとすればどのように異なるのかを検討した。研究の枠組みとして, 状況モデルに5つの状況的次元 (同一性, 時間性, 空間性, 因果性, 意図性) を仮定するモデルを採用した。このモデルによれば, 各状況的次元において連続的なイベントは互いに強く連合されるはずである。本研究では, イベント間の連合の強さを動詞分類課題における分類パターンによって測定した。実験1では, 昔話と説明文を比較した。分析の結果, 物語文と説明文では状況的次元の寄与が異なること, 特に, 空間性と意図性において異なることが示唆された。実験2では, 昔話を小説に変えて追試を行い, 空間性, 意図性, 距離の要因に異なる寄与を仮定する複数のモデルの適合度を比較した。その結果, 空間性と意図性の寄与において差があるとするモデルが最もよい適合を示した。物語文では空間性の寄与が見られないのに対して, 説明文では負の効果が認められた。また, 物語文では意図性が連合を強めたのに対して, 説明文ではほとんど効果が見られなかった。最後に, この結果の理論的意義及び実践的意義について論じた。

著者関連情報
© 2006 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top