教育心理学研究
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現職教師は授業経験から如何に学ぶか
坂本 篤史
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2007 年 55 巻 4 号 p. 584-596

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抄録

本研究は, 現職教師の学習, 特に授業力量の形成要因に関し, 主に2000年以降の米国での研究と日本での研究を用いて検討し, 今後の展望を示した。現職教師の学習を1) 授業経験からの学習, 2) 学習を支える学校内の文脈, 3) 長期的な成長過程, という3つの観点から包括的に捉えた。そして, 教師を“反省的実践家”と見なす視点から、現職教師の学習の中核を授業経験の“省察 (reflection)”に据えた。授業経験からの学習として教職課程の学生や新任教師の研究から, 省察と授業観の関係や, 省察と知識形成の関係が指摘された。学校内の文脈としては教師共同体や授業研究に関する研究から, 教師同士の葛藤を通じた相互作用や, 校内研修としての授業研究を通じた学習や同僚性の形成が示唆された。長期的な成長過程としては, 教師の発達研究や熟達化研究から, 授業実践の個性化が生じること,“適応的熟達者 (adaptive expert)”として発達を遂げることを示した。今後の課題として, 現職教師の個人的な授業観の形成過程に関する研究, 教師同士が学び合う関係の形成に関する実証的研究方法の開発, 日本での教師の学習研究の促進が挙げられた。

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© 日本教育心理学会
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