教育心理学研究
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主体的に考え, 学び合う授業実践の体験を通して, 子どもはグラウンド・ルールの意味についてどのような認識の変化を示すか
松尾 剛丸野 俊一
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2008 年 56 巻 1 号 p. 104-115

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抄録

本研究の目的は,(1) 児童が学び取っている, 話し合いを支えるGR (グラウンド・ルール) の意味,(2) その学びの契機になったと考えられる授業実践の特徴, の2点を明らかにすることであった。学年進行に伴ってそれまでと異なった授業観をもった教師が担任となった6年生1学級 (女児12名, 男児10名) を対象に, 質問紙調査, インタビュー調査, 国語の授業観察を行った。質問紙およびインタビュー調査から,(1) 考えのわずかな違いも重要だと考えるようになった,(2) 自分の意見にこだわり, じっくりと考えることで学びが深まることを実感した,(3) 他者の考えを聞いて学ぶことが重要であると考えるようになった, などの学びが児童に生じていたことが示された。さらに第5学年時と比較しながら第6学年時の授業過程を検討した結果,(1) 視点の多様性と違いをもとにした学びの深まり,(2) 全ての児童を学習の主体とする談話の場づくり, という特徴が学びの契機となっていたことが示唆された。教師は, リヴォイシングなどの談話方略を用いて, 児童が他者の考え方を共有し, その視点から各自の立場を考えなおすような機会を授業に生成していた。

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© 日本教育心理学会
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