抄録
自己誘発発作を主発作とした頭部外傷後てんかんの男児を経験した。1歳4カ月時に頭部外傷(左急性硬膜下血腫)をきたし、2歳2カ月に姿勢発作を発症した。発作はVPAで抑制されたが、5歳8カ月から運動、感覚、音刺激を一定の順序で加えることにより自己誘発される同様の姿勢発作(1日の中で最初の発作は引き続いてシリーズ形成性のスパズムを伴う)が出現した。自己誘発発作の特徴として1度発作を誘発するとその後しばらくは誘発を試みても発作が出現しない不応期と発作時に快感覚を伴うことを認めた。経過中に自己誘発なしでも同様の発作(自発発作)が出現するようになり、抗てんかん薬治療に抵抗した。しかし、9歳1カ月時より自慰行為の出現とともに全ての発作は抑制された。