抄録
高齢化に伴い、日本では慢性透析療法中のてんかん患者が増加していくと予想される。我々は、バルプロ酸とフェニトインで治療されていた慢性透析療法中の前頭葉てんかんの患者にゾニサミドの追加投与が有効であった症例を報告する。症例は50歳女性。間質性腎炎のために43歳で血液透析が導入された。48歳時、意識消失を伴う全身けいれんが生じ、右前頭葉の陳旧性脳梗塞による症候性部分てんかんの診断にてバルプロ酸とフェニトインが開始となった。しかし透析後の発作が続いたため当院に初診。バルプロ酸とフェニトインを増量したところ一旦発作は抑制された。しかし3年後に透析後の発作が再発。ゾニサミドを追加すると発作が抑制された。血液透析による抗てんかん薬の平均除去率を比較すると、バルプロ酸は46%、フェニトインは33%、ゾニサミドは18%であった。慢性透析療法中の抗てんかん患者では、透析前後の抗てんかん薬の血中濃度を測定し、薬物調整をすることが重要であると考えられた。