BBBは脳微小血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトの3種類の細胞と2枚の基底膜から構成されている。BBB機能の主役は最内層を構成する内皮細胞であり、病的状態でのBBBの破壊は、(1)液性因子の漏出と(2)炎症性単核細胞の神経実質内侵入、のそれぞれ分子的に全く独立した2種類のメカニズムからなっている。このBBB破綻・修復メカニズムの制御は、中枢神経疾患新規治療のkeyである。たとえば、多発性硬化症をはじめとする自己免疫性中枢神経疾患や神経感染症では、破綻したBBBを経て単核球や炎症性サイトカインが炎症部位へ大量に動員される。したがって、BBBの破綻防止やその修復は炎症性神経疾患の治療に向けての重要な戦略になり得るが、本稿では脳梗塞、ALSなど非炎症性中枢神経疾患に重点を置いてBBBの重要性を概説する。BBBを越える脳内へのdrug deliveryシステムの開発は、各種神経変性疾患の新規治療法の確立に道を開くものである。