てんかん研究
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特別企画シリーズ:てんかんと女性をめぐる問題を理解する
妊娠と抗てんかん薬
吉永 治美
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ジャーナル 認証あり

2020 年 38 巻 2 号 p. 165-169

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抄録

女性のてんかん患者が安心して妊娠出産に臨むには、医療者が抗てんかん薬の妊娠による薬物動態の変化や、胎児への影響を周知し、より安全な治療を妊娠中も継続して提供することが重要である。内服による胎児への催奇形性、出生した小児の認知能力の低下などの影響が最も危惧されるのはバルプロ酸であり、その影響は用量依存性に増加し、また多剤併用がより危険度をます。そこで妊娠中は胎児への影響の少ない薬剤を単剤で選択することが必要であり、バルプロ酸が必須の場合は単剤で徐放剤を選択の上、少量にとどめる。妊娠中は代謝や排泄、蛋白量などの変化から、血中濃度の低下が見られる場合があるが、個人差、併用薬剤による差などあるので、一律の増量は勧められない。一方、授乳については、最近は認容されてきたが、新規抗てんかん薬の中ではラモトリギン、レベチラセタムなどは乳汁移行率が高いので注意を要する。これらの周知とともに、思春期前後からの薬剤の選択も必要である。

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© 2020 日本てんかん学会
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