2020 年 38 巻 2 号 p. 155-164
国際抗てんかん連盟(ILAE、2017年)によって、てんかん発作型の新しい国際分類が提案された。そのさいの変更の1つには、かつての“側頭葉てんかん”、“前頭葉てんかん”、“頭頂葉てんかん”、“後頭葉てんかん”と呼ばれた部分性の発作が、まとめて「焦点発作」になったことである。分類の第2部を担当した著者ら(R.S.Fisher et al)が述べるには、てんかんとは脳におけるネットワークの障害と考えられ、脳のある部分に限局した病変による症状とはいえず、それらは大脳の新皮質、視床と皮質系、辺縁系、脳幹におけるネットワークが関与するのではないかと考えている。
しかし、頭皮上脳波の電位分布を解釈するには、神経学的ネットワークばかりでなく、電位分布についての物理学的法則(“体積伝導”)も適用すべきと考えられる。また、辺縁系については、そのうちの海馬が診断学的見地からも重要であると考えられ、この分類案についての議論は今後も続くと考えられる。