教育・社会心理学研究
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学級雰囲気に関するグループ・ダイナミックスの研究 (第II報告)
所謂, 専制的, 民主的, 自由放任的指導タイプの効果に関するCross-Cultural Study
三隅 二不二中野 繁喜
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1960 年 1 巻 1 号 p. 10-22

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抄録

本研究は, アメリカにおけるレヴィーン, リピット, ホワイトによる, いわゆる “専制的” , “民主的” , “放任” 指導法に関する諸研究の成果を, 社会-歴史的背景を異にする日本において, 更に検証しようとしたものである。
被験者として福岡市高宮小学校5年生の男子30名 (年令10-11才) を用いて等質集団6組を編成し, 課題として福岡県の模型地図作成をえらんだ。本報告の結果を要約すれば, 次の如くである。A. 仕事に対する熱心さ
(1) 指導法の変更前においては, 専制的指導者の下で最高であったが, 変更後においては (特に変更後の最終日においては) 民主的指導者の下の方が最高となった。平均値としては専制的集団が最も熱心であった。
(2) 自由放任的指導者の下では, 他の二集団に比較して仕事に対する熱心度は最低であった。
(3) 民主的指導タイプの集団では, 仕事に対する熱心度は上昇傾向が著しく, 最終日には最高となった。
(4) 指導タイプ変更後, 最も著しい下降を示したのは, 専制的指導から自由放任的指導へ変更されたときであった。
B. 攻撃的反応の頻度に関しては, 専制型に移行した場合は, いづれの場合も減少した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 民主型からの移行の場合は減少し, 専制型からの場合は増大した。
C. 友好的発言の頻数に関しては, 専制型に移行した場合は, 民主型からの場合は減少し, 自由放任型からの場合は増大した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 専制型から移行した場合は著しく増大し, 民主型からの移行の場合は変更前と差異がなかった。
D. 課題解決を遂行途中, 指導者が不在になった時の, 各集団成員が示した反応塚数の変化について
(1) 攻撃的専制集団の場合は, リーダー不在時に, 不平不満や注目をひく発言が増大し, 集団中心的発言や知識を求めたり与えたりする発言, 仕事中心の発言が減少し, 一方仕事外の発言が増大している。
(2) 服従的専制集団の場合は, 友好的な快活的な発言が増大した。
(3) 民主的集団の場合は, リーダー不在によって, 同僚依存や攻撃性が著しく増大し, また, 注目をひく発言, 集団中心的発言, 知識を求める, 与える発言が増大した。一方, 仕事外会話が減少した。
(4) 自由放任的集団の場合は, 不平不満が著しく増大したが, その他では著しい変化はあらわれなかった。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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