教育・社会心理学研究
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非社社会児の適応に関する実験的研究
原岡 美保子
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1962 年 3 巻 2 号 p. 79-90

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抄録

本実験は, 遊戯実験場面に於て, 幼児の言動を観察し, 非社会性児が如何なる集団に適応し易いかを明らかにしようとするものである。被験者は, 知能を統制して155名の幼児園児より拙出された非社会性児16名, 普通児40名で各被験者は2回の実験場面に割当てられた。これらの被験者に対し, グループの大きさ及び性別による集団の違い, すなわち, 2人, 3人, 5人及び同性, 異性, 混性というグループを独立変数に15分間の双六遊びを行わせ, 当該時間中の被験者の反応を, 各々独立した2名の観察者により記録した。本実験条件下における結果は次のように要約される。
1, 反応総数では, 非社会性児は普通児より少なくその差はP<.001で有意である。
2, 集団の大きさについては, 普通児は5人グループでも適応可能と思われるが, 非社会性児は3人グループに対して適応し易く, それよりも小さくても大きくても集団に適応し難くなる傾向が見受けられる。
3, 集団の性別に関しては, 非社会性児, 普通児ともに同性グループにもっとも適応し易いが, 非社会性児は普通児に比べて異性, 混性グループに対しては適応度が低かった。
4, 各カテゴリー一反応数の全反応数に対する割合に於て, 非社会性児が普通児に比し大きいのは『緊張』『仕事上 (一)』についてであり, 集団に適応し難い傾向を示すものである。普通児の全反応数の50%は課題遂行面に用いられ, 一方, 非社会性児では, 課題遂行に用いられたものは23%に過ぎなかった。
5, 一般に, 非社会性児の反応数は, 課題領域より感情領域に多い。
6, 非社会性児のコミユニケーションを与え且つ受けた割合は3人グループ, 同性グループに多く, 非社会性児のコミユニケーションの割合が小さく, これとは反対に普通児相互のコミユケーションの割合が大きいのは異性グループであった。従って, 集団の大きさでは3人グループ, 性別では同性グループにおいて, 非社会性児は適応しやすいものと思われる。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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