教育・社会心理学研究
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ソシオメトリーにおける2段階構造に関する実証的研究
狩野 素朗
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1965 年 5 巻 1 号 p. 21-31

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抄録

集団の任意の成員aとbの間の直接的関係をa, b間の一段階関係, 一人の中間者cを通じてのa, b間の関係を2段階関係, 一般に (n-1) 人の中介者を経ての関係を成員a, bに関するn段階関係とする。
本研究はソシオメトリーにおける2段階的選択関係にもとづく地位を独立変数とし, それと関連する行動的特性を従属変数とすることによって2段階地位の妥当性について検討することを目的とした。
方法は中学校の4学級合計188名に「勉強」「遊び」「相談」を選択規準とするソシオメトリック・テストを行ない, それによって1段階的被選択地位が等しく, かつ2段階的被選択地位が異なるという条件により, 2人1組の対137組を構成した。これらの各対について, クラス担任, 授業担当の教師4名が生徒たちの影響力, 社交性, 信頼感, 人気, 学力の5つの行動次元について一対比較を行ない, どちらの生徒がその行動次元について特性が高いかの評定を行なった。教師たちには, ソシオメトリーの結果については何も知らされていない。
2段階地位が高い方に「行動特性高し」と判断された度数と, 2段階地位が低い方に「行動特性高し」と評定された度数を集計した結果
1) ソシオメトリーの勉強の規準においては影響力, 信頼感, 学力について, 遊びの規準においては社交性について, また相談の規準においては社交性, 人気, 信頼, 学力について, それぞれソシオメトリーの2段階地位の高い方に「高い行動特性あり」という判断が多かった (有意水準5%)。他の規準と行動次元の組み合わせにおいても度数分布の差は有意ではないが, すべてのこの方向への傾向が見出だされた。
2) このことからして, 教師による生徒たちの行動評定との対応をみるという条件のもとでは, (他の条件が等しければ), ソシオメトリック・テストの2段階地位の高い生徒に対し, それぞれの行動特性の評定において高い得点が与えられる傾向があることが明らかとなったが, その傾向の有意性は規準と行動次元によって異なっており, 概してソシオメトリーの1段階地位が関連すると思われる行動次元に対し, 2段階地位も強い関連を有するようである。このことはソシオメトリーの直接的選択関係の重みづけについて考える場合, 選択者の1段階的地位を重みづけのindexとすることの妥当性を示唆するものと思われる。
3) 間接的被選択地位は人気や社交性よりも, 影響力, 信頼感に対して, より強く関連を有するであろうという仮説については, 「勉強」 の規準によるソシオメトリーとの関連についてのみ, その仮説にそう傾向が見出だされた。このことからMorenoによる多段階関係とリーダーシップに関する構想は, socio-criterionによる選択関係についてのみ妥当すると考えるべきではなかろうか。

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