教育・社会心理学研究
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5 巻, 1 号
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  • 三隅 二不二, 田崎 敏昭
    1965 年 5 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, ある炭鉱企業組織体における第一線監督者, 並びにその上役である第二線監督者の監督行動の類型を, 目標達成機能 (P機能) と過程維持機能 (M機能) の2次元から操作的に, P型, M型及び両者を兼備したPM型, 次にPとMの機能の強度が, 基準以下に弱いpm型の4類型を設定した。そして, それぞれの監督行動類型が, 集団の生産性と成員の “モラール” に対していかなる効果を与えるかを, 明らかにしようとしたのである。
    監督行動のP, M得点は, その監督者の部下たる一般採炭員の認知にもとづいて測定された。調査対象は, 一般採炭員215名。調査の方法は, 質問紙による集団面接法であった。
    結果を要約すれば次のごとくである。
    (1) 高生産の4作業集団のうち3集団の第一線ないしは第二線監督類型として共通なものはPM型であった。一方, 低生産の同じ3集団においては, P型であった。
    (2) 残りの一作業集団においては, M型が高生産の作業集団に存在したことが, 低生産の作業集団と相違する点であった。そして, 低生産の作業集団においては, pm型が共通類型であった。
    (3) 高生産の作業集団の方が, 低生産の作業集団と比較して, 作業員の “モラール” が相対的に高い傾向が見出された。
    (4) 監督行動におけるPとMの要因が, 生産性とモラールの増大に最適度の刺激となる場合は, PとMが相乗関係の状態, すなわちPMのときである。そのとき, MがPに対して触媒的効果を生じるという解釈が本調査結果にも妥当するであろう。
    (5) PとMの要因効果には, PとMの強度も何らかの相関があることが暗示された。
  • GOSAKU NARUSE
    1965 年 5 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
  • 狩野 素朗
    1965 年 5 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    集団の任意の成員aとbの間の直接的関係をa, b間の一段階関係, 一人の中間者cを通じてのa, b間の関係を2段階関係, 一般に (n-1) 人の中介者を経ての関係を成員a, bに関するn段階関係とする。
    本研究はソシオメトリーにおける2段階的選択関係にもとづく地位を独立変数とし, それと関連する行動的特性を従属変数とすることによって2段階地位の妥当性について検討することを目的とした。
    方法は中学校の4学級合計188名に「勉強」「遊び」「相談」を選択規準とするソシオメトリック・テストを行ない, それによって1段階的被選択地位が等しく, かつ2段階的被選択地位が異なるという条件により, 2人1組の対137組を構成した。これらの各対について, クラス担任, 授業担当の教師4名が生徒たちの影響力, 社交性, 信頼感, 人気, 学力の5つの行動次元について一対比較を行ない, どちらの生徒がその行動次元について特性が高いかの評定を行なった。教師たちには, ソシオメトリーの結果については何も知らされていない。
    2段階地位が高い方に「行動特性高し」と判断された度数と, 2段階地位が低い方に「行動特性高し」と評定された度数を集計した結果
    1) ソシオメトリーの勉強の規準においては影響力, 信頼感, 学力について, 遊びの規準においては社交性について, また相談の規準においては社交性, 人気, 信頼, 学力について, それぞれソシオメトリーの2段階地位の高い方に「高い行動特性あり」という判断が多かった (有意水準5%)。他の規準と行動次元の組み合わせにおいても度数分布の差は有意ではないが, すべてのこの方向への傾向が見出だされた。
    2) このことからして, 教師による生徒たちの行動評定との対応をみるという条件のもとでは, (他の条件が等しければ), ソシオメトリック・テストの2段階地位の高い生徒に対し, それぞれの行動特性の評定において高い得点が与えられる傾向があることが明らかとなったが, その傾向の有意性は規準と行動次元によって異なっており, 概してソシオメトリーの1段階地位が関連すると思われる行動次元に対し, 2段階地位も強い関連を有するようである。このことはソシオメトリーの直接的選択関係の重みづけについて考える場合, 選択者の1段階的地位を重みづけのindexとすることの妥当性を示唆するものと思われる。
    3) 間接的被選択地位は人気や社交性よりも, 影響力, 信頼感に対して, より強く関連を有するであろうという仮説については, 「勉強」 の規準によるソシオメトリーとの関連についてのみ, その仮説にそう傾向が見出だされた。このことからMorenoによる多段階関係とリーダーシップに関する構想は, socio-criterionによる選択関係についてのみ妥当すると考えるべきではなかろうか。
  • 自己志向, 相互作用志向, 課題志向の研究
    白樫 三四郎
    1965 年 5 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は自己 (self), 相互作用 (interaction), 課題 (task) の3つの行動志向性 (orientation) が集団内行動の相互評価といかなる関係にあるかを明らかにしようと試みたものである。
    被験者は九大で行なわれた研修会の参加者13名 (うち女子1名)。専門のトレーナー1名の指導によるTグループ (毎回1時間半, 継続して16回のセッション) 終了後, 研究資料がえられた。被験者個個人のorientationの程度は, 第三者としての観察者の評定による。集団内行動の相互評価は, 被験者が記入した評定用紙の結果にもとづいて測定された。結果の主なものを要約すると次のとおり。
    1. orientation評定の信頼度は高かった (. 68-. 83)。
    2. 自己志向性の高い人は, 課題, 相互作用, コミュニケーション, 影響などの集団過程の諸側面において, 同一集団の他の成員から低く評価された。
    3. 相互作用志向性の高い人は, 同一集団の他の成員から 「他の人に気楽な感じをもたせる」, 「他の人をいらいらさせない」 と認知された。彼等は集団の相互作用促進の機能を果たした。
    4. 課題志向性と集団内行動の相互評価との間に一義的な関係は見出されなかった。
    5. アメリカにおける類似の研究結果と本研究の結果との間にかなりのくいちがいが現われた。
  • 自己関与の口述に対する承認および否認
    横田 澄司
    1965 年 5 巻 1 号 p. 43-59
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    実験は, 実験者による承認おょび否認を意味する非言語的な動作を使用することが, 面接状況の被験者にとって強化事象を構成するのかどうかを理解するため, および長期間にわたる消去の効果がどのような言動に対する規制力をもつのかをみつけるために行なわれた。
    (1) 自己関与の口述については, オペラント・レベルの6分間の測定がなされた後, 実験群Iでは6分間の注意と承認を示す非言語的態度が実験者によって示され, 被験者 (児童5年生) に強化された。長い消去期間の前半においては, その強化の影響も認められたが, 後半においては承認的な強化の中断が, 黙殺を意味するnegativeなcueを提供していることが理解された。同じ手続きが, 無視と否認の実験群IIの被験者にも行なわれた。この群の強化期間に与えられた否認的態度は, ほとんど実験群Iと正反対の様相を示し, SR値 (=自己関与の口述数/全口述数) は強化期間に減少を示し, 消去期間の前半にはさらに減少を示すが, 後半には否認的な強化の中断が承認的な意味をもってくることになり, 増加を示している。まったく何の強化も加えられなかったコントロール群の被験者は, 自由連想の時の口述状態と同一パターンがみられた。以上から非言語的な「注意と承認」「無視と否認」を意味する条件は, それなりに強化事象を構成すると判断された。そして消去効果も両条件において顕著な差異を示した。
    (2) 自己関与の口述に与えられた評価が, その他の口述にまで波及していくのか, またそれはどのような影響を与えるのだろうかについては, 実験群Iにおいてオペラント・レベルでの自己関与とその他の両口述数と比べて, 強化期間においても頻数は著しく増大しているが, その関係 (相対比) は同じであることが見出された。ただ消去期間の前半で, 自己関与の口述数はその他の口述数と同じくらいの頻数をもつことになり, 後半では両口述数が著しく減少するが, 特に自己関与の口述数はその他の口述数と比べて減少を示している。実験群IIでは, オペラント・レベルから, 強化期間, 消去期間の前半に至るまで, 自己関与の口述数はその他の口述数に比べて減少の一方をたどる。消去期間の後半になって両口述数は著しい減少を示すが, やや自己関与の口述数は増加を示して, オペラントの状態に近づいている。
    (3) 長い消去期間で, 両実験群ともに情動的な困惑を示したものもいたが, 話題に対して, あるいは実験者に対して, 若干の側面に有意な差が認められた。
  • とくに基督教との関連における
    安藤 延男
    1965 年 5 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    基督教との関連で生じる外行動としての宗教的行為 (もしくは宗教生活) に関するインベントリーの作製手続きについて報告した。
    (1) “宗教的行為” の概念的定義については, 岸本の所論 (1961) を適用した。かつその測定の意義について述べた。
    (2) 24個の質問項目からなる原案を作製し, 予備調査 (対象: 福岡女学院高等学校3年生, N=184, 1962年度) の資料による上位・下位分析を行い, 22項目を有する最終形式をえた (Table 1)。
    (3) インベントリーの最終形式の質問項目22個の相互相関係数 (ピァソンのr) 231個の相関行列にもとずく因子分析のあと軸の直交回転を施した (Table 2, 3)。3個の因子に関する解釈は以下のとおりで, いずれも基督教徒の日常生活の重要な諸次元を指示する内容であった。すなわち, 第1因子は 「神中心的生活」 因子, 第2因子は 「宗教的修養」 因子, 第3因子は 「世俗生活への積極性・責任性」 因子である (Table 4, 5, 6)。
    (4) 一次因子の相互独立性について検討したところ, 3つの一次因子は総合点に対し, かなり高い相関を示し, かつ二次因子のレベルでも第1因子 (A) における負荷がきわめて高いことが見出された。したがって, 本インベントリーの一次因子相互間には, かなりの内的整合性がみられることから, 一次因子に準拠せる下位尺度の構成は見合わせることとした (Table 7)。
    (5) インベントリー最終形式の弁別力を吟味するため, いくつかのグループからえられた回答資料で分布を検べてみたところ, いずれの場合も, 6もしくは7標準偏差に及ぶ広範囲の分布がみとめられた。したがって, 最終形式の弁別力は満足すべきものということができる (Table 8-a, 8-b)。
    (6) 信頼性は再検査信頼度係数を用いて吟味した結果, r=. 752という, かなり満足すべきものであった。
    (7) 妥当性の吟味は多面的に行われた。妥当性の規準としては, 基督教会における洗礼の有無, 基督教関係学校学生・生徒と教会礼拝出席者の比較, 自己が主観的に帰属する宗教, 両親の宗教, 宗教的情操尺度・基督教への態度尺度・聖書の知的理解などの諸得点が採られ, それぞれについそ相関関係を検討した。その結果, 本インベントリーの妥当性は望ましいものであることが示された (Table 9~14)。
    (8) 本インベントリーは, 福岡女学院中学・高校, 西南学院中学・高校, カトリック系明治学園中学・高校のほか, 西南学院大学文学部神学科や基督教会の若干につき実施されたにすぎない。しかしながら, 本インベントリーの利用面を考え, 暫定的な標準化を行った (Table 15, 16)。いうまでもなく, 今後における資料の集積を侯って, 逐次改訂される必要のあることはいうまでもない。なお, この標準化に用いた素資料を付録として示しておく (Appendix 1-3)。
  • 看護学院生の帰寮時刻に関する調査研究
    佐々木 薫
    1965 年 5 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1. 全寮制を採っている一高等看護学院の全学生64名を対象に質問紙調査を実施して, 寮の門限に関する非公式な規範, 学院生活の諸側面に対する態度その他を測定した。
    2. 門限に関する規範はreturn potential modelを用いて学年別に分析された。分析の結果: 規範の密度は, 学年の上昇と共に増大を示した (とくにに1年生~2年生間が顕著)。規範の虚構性は, 1年生~2年生間で著しい減少, 2年生~3年生間で再び若干の増大を示した。規範の結晶度は1年生~2年生間で上昇し, 2年生~3年生間で再び低下した。
    3. 学年の上昇 (集団所属期間の増大) がもたらす 〔学年subgroupの〕 規範の安定化ならびにその後の不安定化への傾斜という現象について, 他の資料を総合した考察がなされた。とくに後者 (不安定化への傾斜) については, 集団内地位の上昇に伴う判断の独立性および集団所属終期 (卒業) への接近に伴う心理的動揺による解釈が試みられ, その際, この種の集団, すなわち, 一般に教育訓練を目的とし, 一定期間所属の後にそれからの離脱が予定されているような公式集団の特殊性が注目された。
  • 生富 寛
    1965 年 5 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1965年
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は高校1年のクラブ活動でのパターン・プラクテイスを中心にした英語の学習活動で, 集団学習法によって指導した場合と講義形式による場合とでの効果の比較を目的としたものである。各組とも16名からなるが, 集団学習組は更に4人グループで4群構成された。1日3時間で12日間計36時間の学習活動を行った。教材はC.C. FriesのAmerican English Series第2巻の単元1より5までを用いた。各単元での基点となる文をもとにして, 教師対生徒によるパターン・プラクテイスをまず行い, その後集団学習組では集団単位でメンバー間の対話による口頭練習に入った。講義組は特に生徒の口頭発表を強調して教師対生徒のプラクテイスを行った。教材は全て基点文を基調として学習されていった。学習効果は5つの面から測定された。テストは学習活動の前後2回にわたって行われた。その結果次のことが明らかになった。
    学習活動後において, 集団学習組講義組ともに全5種類のテストにわたって著しく高い点をとる様になった。集団学習組では講義組とくらべて特にそれが大きいと認められた。テスト1のヒアリングでは講義組の方が, 集団学習組よりよい点をとった。テスト2の問に対する速答, テスト3の語彙交換とコンヂュゲイションについては, 集団学習組は講義組よりいくらかよいという程度であった。テスト4の読解力と英作文, テスト5の英作文では集団学習組が講義組とくらべて著しく高い点をとった。このテスト別による両組の得点傾向から, 集団学習組では英作文形式の問題でとくによい点をとる様になった。また講義組ではヒアリングが集団学習組よりよかったという特徴をあげることが出来る。
    グループ別の得点傾向からは, メンバーがほぼ同じ様な実力からなる集団が高い向上率をみせた。そしてこの種の集団はまた凝集性も高かった。
    パターン・プラクテイスにおいて, 集団学習組が英作文形式の問題を中心にして講義組よりよい成績を示したが, これはメンバー間の相互交渉を通して自然な対話練習が出来たことと, 口頭練習の機会が講義組より多かったこと等によると考えられる。その外毎日20分間づつ行った書取り練習の時, 集団学習組によくゆきわたっていたメンバー同士の助合いもあげることが出来る。
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