教育・社会心理学研究
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集団形成に関する一考察
特に類似-非類似の問題を中心にして
出井 康子
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1966 年 5 巻 2 号 p. 215-230

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抄録

集団形成の条件は, 雛の類似か非類似かという問題について分析した. その結果, 類似, 非類似は決定的な要因ではなく, その奥に共通してみられる社会的支持の知覚が, より根本的な要因となるであろうと考え, 社会的支持の知覚が可能となる条件を分析した, そして, 望ましい特性で類似しているとき, あるいは, 非類似で, 欲求の相補性がみたされるときが, そのような条件であり, このとき, attractionが発生して, 集団が形成されるのではないかと推論した. このような文脈たって, 能力についての類似-非類似と, 相手が優秀か劣等かについての2×2 factoriadesignで実験を行なった. 被験者は中学一年生61名. 課題は, 互いに未知な者から成る2人グループでの, グループ対抗の的あてゲーム. (玩具の鉄砲を用いた.) 目隠しをして, 偽りの点数を知らせることにより, 次のような実験条件群をつくった.
(1) 望ましい雛 (能力が優秀) で類似しているグループ ((+) +群)
(2) 望ましくない特性 (能力が劣等) で類似しているグループ ((-) -群)
(3) 自己が優秀で, 相手が劣っているグループ ((+) -群)
(4) 相手が優秀で, 自己が劣っているグループ ((-) +群)
従殿数は, 一般的, 情緒的な, social companionとしてのattractionと, ゲームのパートナーとしての課題指向的な面からのattraction. それぞれのattraction scoreを, 各実験条件群ごとに集計して, 類似-非類似と, 相手が優秀か劣等かについて, 二要因の分散分析をしたところ, 次のような結果を得た. すなわち, 一般的, 情緒的なattractionは, 相手が自分 (の能力) と類以している方が強く, また, 相手の能力が劣っている方が, 優秀な場合よりも強い. ところが, ゲームの時に, 一緒にコンビになりたいという, task面からみたattractionでは, 能力の優秀な相手に対するattractionは, 能力の劣っている相手に対するそれよりも強く, 類似-非類似にはまったく関係がない.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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