1966 年 5 巻 2 号 p. 239-247
本研究は類幻覚経験と被暗示性の高進を指標としてSD現象における初期過程の特徴を明らかにしようと試みたものである.
類幻覚経験はSD条件IとIIで, 被暗示性はSD条件IIでそれぞれ検討した. 実験時間は条件Iでは2時間, 条件IIでは30分である. 結果を要約すれば次の通りである.
(1) SD条件1では全被験者の47%, 条件IIでは70%が何らかの類幻覚経験を報告, その割合は面接時の報告を加えるとさらに大きくなる. (SD条件IとIIのパーセンテージは被験者の年令差, 教示の違いなどで直接比較できない.)
(2) 教示としてSD条件Iでは偽薬プラス暗示, 条件IIでは肯定的教示と否定的教示を行ったが, その結果類幻覚経験の現われるプロセスの型, 報告回数, 報告内容の複雑さのいずれもその影響がみられることがわかった.
(3) 自動運動・後倒暗示でSDにおける被暗示性の高進が確かめられた.
(4) SD中の類幻覚経験が教示や暗示で影響を受けるが, それはSD中に発生する被暗示性高進に基づくことが推論された.