教育・社会心理学研究
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“仮定された自己志向性現象”の生起機制
好意的感情をよせる他者に関して
浜名 外喜男
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1970 年 9 巻 1 号 p. 51-60

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抄録

本研究の目的は, パーソナリティ認知過程における“仮定された自己志向性現象”の生起機制を実験的に解明することである。第1実験においては, “自己のパーソナリティ認知 (S-S'順位) ”の内容に対して実験的操作による上昇変動・下降変動を誘導し, それに伴う当該特性に関するその後の“他者による判断の認知 (S O'順位) ”内容の変動を分析し, また第2実験においては, 逆にS O'順位の内容に対して誘導された実験的変動に伴う当該特性に関するS-S'順位の変動を分析した。被験者は高校1年生であり, 第1実験では49名 (男子22名・女子27名), 第2実験では46名 (男子23名・女子23名) である。なお, 実験は“仮定された自己志向性現象”が最も顕著に認められやすいと予想される, “個人が最も好意的感情をよせる他者”とのあいだで行なったものである。
おもな結果はつぎのとおりである。
1. パーソナリティ認知過程における“仮定された自己志向性現象”が生起する過程には, “他者による判断の認知”を“自己のパーソナリティ認知”に近づけて認知することにより2つの認知内容が一致する投射的一致機制と, 逆に, “自己のパーソナリティ認知”を“他者による判断の認知”へ近づけて認知することによりその一致にいたる投入的一致機制の, 方向において異なる2つの一致過程が存在する。
2. いずれの一致過程をとって“仮定された自己志向性現象”が生起する場合でも, その生起過程は, 個々のパーソナリティ特性に関して個人が認知する社会的望ましさの要因による影響とは無関係である。

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