日本食品化学学会誌
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論文
マウス膝窩リンパ節測定法による天然着色料(コチニール色素、ラック色素および色素本体化合物)の抗原性評価の試み
長岡(浜野) 恵山崎 壮西村 哲治米谷 民雄
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2007 年 14 巻 2 号 p. 51-55

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抄録

マウス膝窩リンパ節測定法(popliteal lymph node assay: PLNA)は、マウス局所リンパ節増殖試験(local lymph node assay: LLNA)では不向きとされた水溶性物質も対象としやすい簡便な抗原性試験法であり、近年、医薬品の抗原性評価法への利用が検討されている。本研究では、まずアレルギーが報告されている天然着色料のコチニール色素に着目し、コチニール色素原体、低アレルゲンコチニール色素原体および色素化合物であるカルミン酸について、PLNA反応性について比較検討した。ついで、ラック色素について、ラック色素原体およびラッカイン酸A,B,Cについて、PLNA反応性を比較検討した。通常のコチニール色素原体の投与群ではindexの上昇は著明であったが、低アレルゲンコチニール色素原体すなわち高度に精製された色素の投与ではindexの上昇はみられなかった。また色素化合物であるカルミン酸投与の場合もindexの上昇はみられなかった。したがって、PLNAの反応性を調べることによって、コチニール色素によるアレルギー発症の原因とされた色素中の不純物の有無を容易に判別できることが明らかとなった。一方、ラック色素では、ラック色素原体およびラッカイン酸の投与のいずれにおいてもindexの上昇は著明であった。このことから、ラック色素化合物本体に抗原性があることが示唆された。以上のことから、PLNAは、抗原性をもつ不純物(たんぱく質など)を検出するための、簡便な免疫学的方法として利用できる可能性が示唆された。

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© 2007 日本食品化学学会
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