森林利用学会誌
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論文
人工降雨装置を用いたスギ・ヒノキ葉の土壌侵食防止効果に関する研究
宮崎 裕之古松 淳志山手 規裕吉村 哲彦
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1998 年 13 巻 2 号 p. 67-74

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抄録

従来よりヒノキ林の林床における土壌流出が問題となっているが,本研究ではスギ・ヒノキの枝条による表面流の抑制及び侵食防止効果を人工降雨装置を用いて検証した。侵食土砂量に影響を与える要因を分散分析によって分析した結果,寄与率の大きい要因は「降雨強度」,「降雨強度×被覆量」,「被覆量」となった。樹種による侵食土砂量の違いは小さく,ヒノキ葉の侵食防止機能はスギ葉に劣らぬことが明らかになった。表面流流量に影響を与える要因を分散分析によって分析した結果,寄与率の大きい要因は「降雨強度」,「被覆量」であり,葉の被覆が侵食の主要因である表面流を抑制することがわかった。表面流の発生機構の説明にタンクモデルを適用した結果,被覆量が少なければ雨滴衝撃によって表面の団粒構造が破壊され,浸透能が低下することが確認された。また,被覆量が多ければ,葉に付着する水の量だけ表面の貯留量が増えることも示された。タンクモデルを用いた場合にも,ヒノキ葉とスギ葉の土壌保全効果はほぼ同等であることが確認されたため,集材によって林外へ持ち出したスギ・ヒノキの枝条を林地へ還元することは林地保全上有効であると考えられる。

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© 1998 森林利用学会
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