森林利用学会誌
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13 巻, 2 号
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論文
  • 宮崎 裕之, 古松 淳志, 山手 規裕, 吉村 哲彦
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 1998/08/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    従来よりヒノキ林の林床における土壌流出が問題となっているが,本研究ではスギ・ヒノキの枝条による表面流の抑制及び侵食防止効果を人工降雨装置を用いて検証した。侵食土砂量に影響を与える要因を分散分析によって分析した結果,寄与率の大きい要因は「降雨強度」,「降雨強度×被覆量」,「被覆量」となった。樹種による侵食土砂量の違いは小さく,ヒノキ葉の侵食防止機能はスギ葉に劣らぬことが明らかになった。表面流流量に影響を与える要因を分散分析によって分析した結果,寄与率の大きい要因は「降雨強度」,「被覆量」であり,葉の被覆が侵食の主要因である表面流を抑制することがわかった。表面流の発生機構の説明にタンクモデルを適用した結果,被覆量が少なければ雨滴衝撃によって表面の団粒構造が破壊され,浸透能が低下することが確認された。また,被覆量が多ければ,葉に付着する水の量だけ表面の貯留量が増えることも示された。タンクモデルを用いた場合にも,ヒノキ葉とスギ葉の土壌保全効果はほぼ同等であることが確認されたため,集材によって林外へ持ち出したスギ・ヒノキの枝条を林地へ還元することは林地保全上有効であると考えられる。
  • 井上 公基, 後藤 英次郎, 長谷川 徹也
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 1998/08/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は,機械化に伴う作業として,機械オペレータのディスプレイ画面を視覚情報とした作業を想定し,作業時間と作業姿勢の組み合わせの違いが作業成績と作業負担に及ぼす影響を調べた。得られた結果より次のことが確認された。(1)キャビン内での連続操作作業では,連続立位作業よりも連続座位作業の方が精神的負担は高まる傾向にあった。一連続作業時間は,15分ごとに変化のある作業と組み合わせることにより,精神的負担の軽減が確認された。(2)心拍数から見た作業種類の組み合わせは,作業開始直後に座位姿勢作業を行わせ,その後立位姿勢作業に移らせることが心拍数の増加を抑えられる傾向が認められた。ストレス感は,長時間の連続作業によるストレスの訴えが高く,作業種類を変化させることがストレスを緩和させる結果となった。(3)作業成績は,長時間連続作業になるほど作業成績は悪く,短時間に作業種類を変化させた作業組み合わせにおいて作業成績が良好な結果となった。この内,特に見逃しは,連続長時間座位姿勢作業で多く現われ,短時間に作業種類を変化させた作業組み合わせで極端に減少傾向が認められた。見逃しは,運転作業に見られる作業ミスの一つで,この出現の大小が労働災害へとつながることと思われる。したがってこの種の作業において,連続長時間にわたる単調作業は労働安全上危険であることが示唆された。
  • 板谷 明美
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 1998/08/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    林道網は森林を将来にわたって有効に利用していくために不可欠な手段であることは言うまでもないが,その一方で自然環境との不調和を生み出していることも事実である。そこで,森林の利用と保全をできる限り両立するため,森林空間の構成を計量的にしかも的確に把握し,基盤整備計画を評価するシステムの開発が望まれている。本研究では,三重大学生物資源学部附属演習林(457ha)を対象に,ひずみを補正したカラー航空写真(正射写真:オルソフォト)をデジタル化して,土地被覆属性の判別・抽出を中心とした解析を行い,航空写真からの森林空間の構成要素の抽出の可能性について検討した。その結果,各属性ごとにRGBの階調に特徴があり,この階調を利用した土地被覆属性の判別・抽出が有効であることが分かった。また,判別・抽出した属性の統合により広範囲での土地被覆属性の把握が容易に行えることが分かった。
  • 長谷川 尚史, 吉村 哲彦, 山手 規裕, 境 慎二朗, 福田 昌史
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 2 号 p. 89-98
    発行日: 1998/08/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,山岳林におけるコードディファレンシャルGPSの測位精度についての検討を行うことである。まず,自動車にGPS受信機を取り付け林道を繰り返し走行した。これらの軌跡をつなぎ合わせることにより,林道経路をほぼ完全に図化することができた。次に,GPS受信機を持って林地の境界を歩行した。林地境界も,歩行の軌跡から移動距離を考慮して異常値を検出することによって,十分な精度で図化することができた。これらの結果,既設林道や林地の境界を1/5,000の森林基本図上に図化するには十分な測位精度が得られることが示された。林内では測位精度が若干低下したが,受信衛星数が5個以上あるいはPDOPが5以下のデータを選別すれば精度が低下しないことがわかった。静止して30秒間に30回の測位を行った結果,平均誤差は平面上で2.86m (7.42mCEP_<95>),空間上で4.71m (12.04mCEP_<95>)となったが,同地点での測位を4回繰り返すことにより,平面誤差の平均は1.32mまで改善した。本研究の結果,衛星の捕捉が困難な山岳林においても,ディファレンシャルGPSが境界測量,林道測量および基準点測量に適用可能であることが示された。
  • 井上 源基, 岡 勝, 吉田 智佳史
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 2 号 p. 99-110
    発行日: 1998/08/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    タワーヤーダ集材作業において適切な集材方法の選択の1解決法として適正な索張り線数について検討を行った。本方法は,目的に対して必要と思われる最小限の条件および要因だけを現実のタワーヤーダ集材作業のなかから取り上げ,集材作業に要する費用を定式化し,総費用を最小にする最適化問題として,適正な索張り線数を算定する方法を提示した。この結果,現在わが国に適用されている各種タワーヤーダに関して,対象面積,対象伐区形状,既設道と対象伐区の位置などの地理的条件ごとの適正索張り線密度や適正スパン長が明らかになり,地理的条件ごとおよび上げ荷・下げ荷集材別の適正タワーヤーダタイプの選択を可能にした。本方法により得られた算定式は,地形条件や集材木の大きさなどの条件を考慮に入れない場合,妥当な結果を示し,概括的な索張り線数の目安を与えることができ,実際の作業計画に対して有効な指針となると考えられる。
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