2000 年 15 巻 3 号 p. 185-196
集材作業の成否を決定する重要な因子として,集材路網の配置や路網形態がある。本論文は森林空間における人や車あるいは木材の移動現象を計量化するために,新たな幾何学的モデルを提案し,移動経路の長さやその線形パターンと領域内の流動に関して積分幾何学などを適用して理論化を試みた。本報では,擬河道網のようなツリー構造の集材路網を対象とし,推計学立場から支路線の位相構造について検討し,ノードとリンクから構成される分岐ネットワークの生成過程や分岐特性を明らかにした。また,対象域内に導入された分岐構造の集材路網の配置指標について検討を行った。その結果,集材路網の分岐点の発生頻度は,ツリー構造の先端点数を含むベキ乗式で近似でき,下端の基点から各集積点(先端点と分岐点)までのリンク比(t_j)と累加集積点数(g(t_j))の関係は,河道網における流路長とその地点までの集水面積の関係で表現でき,そのべキ乗値αが約0.5〜0.6であることを明らかにした。また,対象域内に導入されたツリー構造の集材路網に対して対象域内の各点から集材路までの到達距離は,同一路網形態でも全対象域に対する集材路網の各先端点を境界とする凸域の面積比(k)によって変化し,一般的な樹枝型路網の配置係数(f値)はk≒0.7で極小となり,f値は約1.57であることを明らかにした。