林學會雑誌
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四國に於ける松茸の發生について
朝田 盛
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1932 年 14 巻 4 号 p. 254-264

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抄録
四國の内海に面する方面の氣象條件下に於ては、土壤のpHが3.9~4.3迄の所に、第三十六號、第四號、第七號、發十二號、第十七號の試驗地の如き林相を形成した場合に、松茸發生に最もよき地表の氣象條件を附與するものと考へられます。この林相は部分的には少しの差異を認め得るけれどもこれらは一つの性質の林相が變化したものと見る事が出來ます。即ち赤松林が成立して直根の成長衰へ、側根の生長旺盛となり、枝條が繁茂し始むる時期に形成せる林相が第三十六號、第四號、第一號の如く、松の欝閉度相當密、樹冠の下部が地上三~四米の林相の所は土壤のpHは概ね4.0附近であつて松茸發生多く品質良好であり、この状態は林相が第十二、十七號の林相に至る迄、相當長き期間、繼續するものと考へます。從つて、第十二號、十七號は松茸山としての自然的壽命は前三者より短いものと考へます。
次に酸度の低いpH 4.4~4.7の林相を一瞥します。
(イ)松茸の發生が比較的多き所は、どの林相が理想的林相に酷似するか、又は樹冠の最下部が少しく高き所は下木がこれを補つて居ります。
(ロ)發生「中」の個所は理想的林相と性質の異れる林相より出發せるものであつて、土壤的條件に缺くる所ある爲め、松茸發生の森林を形成せる最初の林相より、既に松茸護發生の條件に缺點を有してゐるやうです。
(ハ)發生少き個所は地位よきため、最初に形成せる森林より理想的林相に遠ざかること大となります。
以上の事實よりして、人工栽培は土壞と林相、これに品種を考へる場合に於て成功し、木材生産を主目的とする主旨とは一致し難いけれども、林相を變化せしむる事によつて或る程度まで、その目的を達することが出來ると考へます。
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