日本林學會誌
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栗接木の活着に及ぼす温度と光線との影響に就て(豫報)
佐藤 敬二
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1941 年 23 巻 8 号 p. 427-430

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抄録
本實驗によつて闡明された事實は次の5項である。
1) クリの接木は豫め砧木を鉢植となし濃室中に入れて休眠を醒まさしめ,開芽出葉を促し置くときは,冬に於ても活着可能である。
2) 温室内の明所に於て接木したるものも,温室内の黒幕枠内に於て接木したるものも同様な活着率を示すが,前者は後者よりも活着後の成績が遙かに優良で,爾後2箇月位は2倍以上の生長量を示してゐる。
3) 冬季2月末に温室内に於て接木したるものは,上述の如く光線享受量の多少に係らず活着を見るが,苗圃に於て接木したるものは活着皆無で,接木の活着には光線よりも温度の方が大なる影響を及ぼすことが判る。而して本實驗によれば,接木後約1箇月間の平均温度が15.3°Cと10.8°C,即ち平均の温度差5°Cによつて成否の岐るるを見たのである。
4) 温室内の明所に於けるものも暗所に於けるものも,接木後2~3箇月の間は,接穗の上方の芽から出た新條は下方の芽から出た新條よりも一般に生長量が大である。
5) 接木の受光量を極めて少量ならしめた場合には,その接穂よりの萠芽は葉緑素を有すること極めて勘く,殆んど白色を呈し所謂モヤシ状となるが,之を通常の場所に持來すときは漸次通常の緑色を取戻し正常の生長を示すのである。
終り,に苗圃に於ける温度測定表を提供せられた林業試驗場氣象部並圖表の作製に助力せられた宮平忠夫氏に對し感謝の意を表する
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