日本林学会誌
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スギノハダニ個体数調査の一方法としての“たたき落し法”について
和田 義人
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1958 年 40 巻 7 号 p. 288-292

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抄録

スギノダニの個体数調査の1つの方法として“たたき落し法”を紹介した。これはハダニを白紙の上にたたき落してからその紙を2つに折りたたんでハダニを押しつぶし,後になつてつぶされた斑点数を数えるもので,野外調査を能率的にしかもかなり正確に行うことができる。
しかし,ある枝の全ハダニ数をハダニが落下しなくなるまでたたき落しを続けることにより求めるならば相当の手数がかかる。
いま,たたき落されるハダニの数がその枝に残つているハダニの数に比例すると仮定すれば次式が得られる。
An=α (S-Yn-1) ここでAnは第n回目のたたき落しにより落下するハダニ数, Yn-1は第n-1回目まで
に落下して来たハダニ数の計, Sはその枝上の全ハダニ数, αは比例定数である。別の形で示せば,
Yn=S{1-(1一α)n}
この式と調査結果とを比較することにより次のことがわかつた。
(1) 始めから1~30のたたき落しまでは上の仮定が非常によく満足されている。
(2) たたき落しが4回目以上になると1回のたたき落しで落下するハダニの割合が期待される値より減小する。これはたたき落しを続けるに伴って,落下しにくい状態にあるハダニの割合が多くなるためであると考えられる。

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