日本林学会誌
Online ISSN : 2185-8195
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最新号
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  • 後藤 義明, 金子 真司, 池田 武文, 深山 貴文, 玉井 幸治, 小南 裕志, 古澤 仁美
    2004 年 86 巻 4 号 p. 327-336
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    人工的に調整した海水をクヌギ林に散布して, 空中消火による海水の散布が森林に及ぼす影響を調査した。海水散布後の樹冠通過雨の導電率 (EC) およびNa+, Cl-濃度は急激に上昇したが, 降雨とともに低下し, 2カ月後には平常の状態に回復した。土壌抽出水のECは海水散布の1週間後にピークに達し, その後は徐々に低下していった。土壌抽出水のECが最も高かった1週間後であっても土壌に残留する塩分は植物に障害を与えることはないであろうと判断された。海水散布の2日後には葉に褐変が現れ, 11日後にはほとんどの葉に壊死が生じた。木部圧ポテンシャルの測定から, この褐変は葉が水ストレス状態になったことによる萎凋ではなく, 海水による葉への直接的な影響によるものと考えられた。海水散布後の5カ月間は落葉量が増加したが, それ以降は海水散布の影響は現れなかった。胸高直径および樹高成長, 堅果生産量にも海水散布の影響は現れなかった。今回の実験により, 海水16mm (16Lm-2, 散布時間約10分) 程度の散布量であれば, クヌギの生育に大きな影響を及ぼすことはないと判断された。
  • -各務原市林野火災を例に-
    菅沼 秀樹, 安部 征雄, 吉武 孝
    2004 年 86 巻 4 号 p. 337-348
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    頻発する林野火災の予防対策立案のために開発された「林野火災応急対策シミュレーション」の感度特性分析と適合性の検証を2002年に岐阜県各務原市で発生した林野火災をモデルケースとして行った。感度特性分析は因子ごとに, 一元配置分散分析, ボンフェローニ多重比較, 直交表L16 (215) にて行った。延焼面積, 拡大延焼速度, 飛火着火数について検討したところ, 可燃物延焼速度比, 風向•風速, 林分平均樹高が非常に重要な因子であることが確認された。また, 林野火災延焼予測には, 飛火着火位置情報が重要であることが示唆された。モデルの適合性を検討した結果, 平均観測値を入力すると誤差が大きいことがわかった。入力値を最大観測値にするとある程度の適合性が確認されたが, 飛火着火の遅延や延焼速度の過小評価が確認された。適合性を向上させるためには, 飛火に関するパラメータの検討, 林野火災の燃焼熱による風系変化の加味, 可燃物延焼速度比の検討が必要であることが示唆された。ただし, 消防隊の配置や林道, 防火帯の設置に関する提案には活用できる可能性がある。
  • 佐藤 弘和, 寺澤 和彦
    2004 年 86 巻 4 号 p. 349-357
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    2001年の冬に択伐が行われた森林小流域 (流域面積9.2ha) において, 2001年6月~2002年11月までの渓流水中の微細土(TFS) とその有機成分 (OFS) の濃度変化を測定し, 択伐前 (1997年6~7月) および無施業流域の濃度と比較した。伐採流域におけるTFS濃度とOFS濃度の平均値は, それぞれ択伐前の値に比べて有意に高かった。伐採実施年における伐採流域のTFS濃度は, 無施業流域に比べて有意に高かった。TFS濃度に占める有機成分濃度の割合 (OFS割合) は, 択伐前後ともに流量があるしきい値を超えたときに値が収束する傾向を示した。増水時のOFS割合は, 択伐前に比べて択伐後に小さくなった。択伐後の流路状況の観察から, 択伐施業にともなうTFS流出のうち, 特に無機成分の流出促進は主に渓流流路直近での集材路敷設にともなう堆積土砂に起因すると推察された。
  • 飯島 勇, 渋谷 正人, 斎藤 秀之, 高橋 邦秀
    2004 年 86 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    倒木上のコケの高さがエゾマツ実生の生残と成長に与える影響を明らかにするため, コケがない倒木 (FLB), コケが低い倒木 (FLS), コケが高い倒木 (FLT) を対象に播種実験を行い, エゾマツ実生の発芽率と生残率,形態ならびに根の分布, 各器官重を調査した。発芽率はFLTで有意に小さく, 生残率は倒木間で差がみられなかった。コケの高さや実生の生残•枯死によらず, 実生の主根の大部分は腐植層や材部に分布していた。当年生実生の個体重はFLT上で最も小さかったが, FLT上の実生は他の倒木の実生より幹が長く, 幹へ多くの器官量配分を行っており, 高いコケによる被陰に対し形態および器官量配分による順応を行っていたと考えられた。1年生実生の個体重はFLSよりFLB上の実生が小さかった。FLB上の1年生実生の根長が有意に短く, T/Rが高かったことから, FLBでは1年生時の根の伸長が制限され, 個体の成長が抑制されたと考えられた。エゾマツの発芽および定着にはFLSが適していると考えられた。
  • 小林 由佳, 北原 曜, 小野 裕
    2004 年 86 巻 4 号 p. 365-371
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    風化花崗岩地帯における崩壊地から発生する表面侵食の実態を把握するため, 長野県飯田松川流域の表層崩壊地に土砂受け箱を設け, 2年間にわたり侵食土砂量を測定した。その結果, 崩壊地からの侵食土砂量は両年で大きな差はなく1,200ton/ha/yrであった。この値は, これまで知られていた値よりやや大きい。侵食土砂量を支配する要因は降雨と凍上融解で, 前者による侵食土砂量は6割を占めた。凍上融解による侵食土砂量は, 年により大きく変動した。降雨による侵食土砂量について, USLEの降雨係数を従来知られている降雨指標と比較検討したところ, いくつかの降雨指標と同等の比較的高い信頼性が得られた。また, この崩壊地についてUSLEの土壌係数を算出した結果, 未熟土の半分程度の値を示した。この土壌係数を用いれば, 崩壊地からの降雨による侵食土砂量の推定にUSLEは有効であると判断された。
  • 石井 洋二, 大原 誠資
    2004 年 86 巻 4 号 p. 372-374
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    カラヤマグワの内樹皮と外樹皮間での含有成分の量的差異 日林誌86:372~374,2004 カラヤマグワの樹皮を内樹皮と外樹皮に分別し, 粉末とした後, 水分および灰分を測定し, Tappi法により樹脂分, フェノール-硫酸法により全糖分, 水蒸気蒸留法により精油分, 並びにバニリン-塩酸法により縮合型タンニン分の定量を行った。水分は外樹皮で6~8%, 内樹皮で8~10%, 灰分は外樹皮で9~14%, 内樹皮で6~19%, 樹脂分は外樹皮で7~10%, 内樹皮で4~10%, 全糖分は外樹皮で4~6%, 内樹皮で8~11%, 精油分は外樹皮で0.2~0.9%, 内樹皮で0.13%前後, 縮合型タンニン分は外樹皮で1.0~3.5%, 内樹皮で0.3~0.8%であった。内樹皮と外樹皮の間で水分, 全糖分, 精油分, 縮合型タンニン分において, 有意な差が認められた。
  • 玉井 幸治, 後藤 義明, 深山 貴文, 小南 裕志
    2004 年 86 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2004/11/16
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    岡山市竜の口山量水試験地を対象に, 林野火災, マツ枯れによる2回の森林の衰退が, 流況曲線に及ぼす影響を対照流域法によって検討した。北谷, 南谷両流域の流況曲線を,森林健全期の36年間について比較し, 回帰直線を求めた。森林衰退期の19年間に対して, 森林健全期に求めたこの回帰直線から算出される日流出量計算値と日流出量観測値を比較した。その結果, ごく0部を除いて, ほぼ全ての日において日流出量観測値の方が大きかった。この増加割合は, 1~40日目で約15%, 140~320日目で約35%, 320日目以上で約43%と,日数が大きいときほど大きかった。
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