日本林学会誌
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ストローブマツの芽に存在する生長物質および抑制物質
小笠原 隆三
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1961 年 43 巻 12 号 p. 307-310

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抄録
ストローブマツの芽に存在する生長物質および抑制物質について調べた結果を報告する。8月下旬に芽の生長物質および抑制物質をエーテルで抽出しペーパー,クロマトグラワィで分離し,アペナ伸長試験で定量した。展開容媒としてイソプロパノールーアンモソニヤー水,(8:1:1)を用いた場合酸性区分においてRfO.0~0.5に生長促進帯が, RfO.5~0.9に生長抑制帯が認められた。中性区分では生長促進帯がみられずRfO.3~0.9に生長抑制帯が認められた。
酸性区分において,EHRLIOH試薬, GORDON & WEBER 試薬による呈色反応からみてイソドール化合物と思われる2つの生長物質(Rf.0.20,RfO.25)と1つの抑制物質(RfO.54~0.84)が認められた。IAA位置にも生長促進がみられたがこれらの試薬で発色を認めることができずIAAの存在を確認できなかつた。しかし芽にIAAの前駆物質であるTryptophaneを与えると明白にIAAの生成を認めることができた。このことは芽に.Tryptophane-IAA転換酵素系の存在することを示しており,無処理でもIAA位置に生長促進のみられることとからみて人為的にTryptophaneを与えない場合でも本酵素系によりTryptophane→IAAの反応が行われているものと考える.
通常これを呈色反応で認めることのできないのは本抽出方法では反応が陽性を示すだけの量が得られない為であろう。
なおTryptophaneを与えるとIAAのほかに1つの生長物質(Rf O.30)と1つの抑制物質(Rf0.53)が新しく認められたが・これらの物とTryptophane.との関係は不明である。
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